Lv1 空を駆ける船
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翌日、スフィアを売るためにベベルへ向かった。
この街には、今でも老人を中心にエボンを崇拝する者が多い。たとえ寺院が自分たちを欺いていたとしてもーー彼らはエボンにすがるしか生きる術がないのだ。
そんな者たちからエボンの祈りを捧げられながら、ユウナはベベルを歩く。懐かしさとほろ苦さを味わいながら。
ーーーベベルは、今でもスピラの中心で。それから、私が生まれた所。故郷ってことになるんだけど、いい思い出はあまりないんだよね
長いグレートブリッジを歩き正門が見えてくると、入口に立っている衛兵がこちらに気づき目を見張る。
「ユ、ユウナ様!?」
衛兵のひとりが慌てて寺院の中に駆け込むと、すぐに僧官が出て来る。
「おぉーーー大召喚士様!!もしや、私ども新エボン党に加わっていただけるのですかな?」
満面の笑みを浮かべる。
「あ、あのーー」
「これは何とありがたいことで。亡きブラスカ様もお喜びになられましょう。早速、我が党の議長を呼んでまいります。しばしお待ちを!」
一方的に捲し立てると、リュックたちには目もくれず、僧官は寺院へ戻っていく。
「強引だね」
「人の話を聞かないのは、どっちも一緒だね」
青年同盟のヤイバルといい、リュックたちが呆れているとユウナはソワソワしだす。
「ねえ、帰っちゃおうよ」
「どうしたの?ユウナん」
「実はね、縁談があったんだ。相手は新エボン党の党首の息子って人。断ったんだけど!ほら、なんていうか、会っちゃったらイヤだな・・」
「おぉ~」
「確かに面倒そうだな。アヤにまかせて引き返すか」
「なんでなんで~」
押し問答をしていると、門が開き、若い男が現れた。ユウナに対し丁寧に祈りを捧げると、穏やかな笑みを浮かべ
「初めまして、ユウナさん。新エボン党議長のバラライです」
落ち着いた低めの声が名乗ると、リュックが驚く。息子のいる党首というから、もっと年の行った人物を想像していたのだ。
「君が、党首の息子?」
「あぁ、党首は先日辞任しました。議長だった息子さんも一緒にね。あの人たちは、権力を独占しようとしたので引退してもらったんです。今は、僕たち若い連中の話し合いで、党を運営しているんですよ。アヤさんにも、不便をおかけしました。どうぞ、自由に出入りしてください」
「ありがとう・・」
いつの世も、権力は人を狂わせる。アーロンの親友だった男もーーー
「と、いうことで、僕は大召喚士様のお相手ではないのですから、ご安心を」
「あっ!」
縁談を断った経緯を聞かれていたユウナは、顔を赤らめて両手で口を押さえる。その様子に、バラライは笑みを深くして続ける。
「もちろん、皆さんが我が党に協力してくださるというなら、大歓迎です。エボンに対して複雑な想いがあるでしょうが・・
それを乗り越えて、力を貸して欲しいと思っています。
世の中が変わっていくとはいえ、そう簡単に変われない人も多いのです。僕たちは、そういう人たちの力になればいいなと思っています。
それでは、僕は仕事があるのでこれでーーそうそう、古い時代のスフィアを見つけたら、是非、僕らに届けてください。もちろん、謝礼を差し上げます」
「バラライ議長、早速ですけど、スフィアを持参したので買い取っていただけます?」
「勿論です。中で話しましょう」
右手で中へ入るように促されアヤは進んだが
「ユウナ、中で待っていたら?ここにいても見物人が増えるだけよ」
そう言われて振り返ると、寺院の前には人だかりが出来ていた。街中を歩くユウナの噂が拡がったのだろう。
集まった人々の顔は、ユウナがエボン党に加わるのかと期待に満ち溢れている。
「ユウナん、中へ入ろうよ」
「うん・・」
もう、みんなの期待には応えられない。応えなくてもいい。
自然と湧く後ろめたさを胸の奥に押し込み、寺院の中へ入った。
中庭で時間をつぶしていると、見るからに金貨がギッシリ入った袋をぶら下げ、アヤが戻ってくる。良い値で売れたようだ。
「アヤさん、ベベル寺院に出入してたんですか?」
「えぇ。討伐隊に参加していた時に使っていた部屋がまだあるのよ。そこに置いてある物が必要な時にちょっとね」
飛空挺に戻るとアニキに報告する。
「アニキ、スフィアを買い取ってもらってきたわ。はいーー」
「ん、お疲れさん」
アニキに見せた後、金貨をダチに渡す。カモメ団の財布は、ダチに任されている。ダチは金貨の入った袋を受け取ると、ニヤリと笑う。
「ちょうどいい時に帰ってきたな。スフィアの情報ありだ」
「どこどこ!!」
「ザナルカンドだーー」
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