Lv1 空を駆ける船
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5人は、青年同盟の敷地内にある休憩所に移動した。
そこには、粗末なテーブルとベンチがいくつか設置されており、そのひとつに腰を下ろした。
メイチェンは、ユウナたちを見渡すと直ぐに口を開く。
「この2年ーーまさに、激動の日々でした。ユウナ様がシンを倒し、更に人々がエボン寺院の欺瞞を知りーーースピラは混乱の極みと言っても良かったでしょうなぁ。
しかしそれは、決して無益な混乱ではありませんでした。新しいスピラを創るという熱気に満ちていましたからな」
ビサイドに籠っていたユウナは、興味深げに聞いている。
「さて、そんな中で巻き起こったのが、真実運動ですな。寺院によって隠され、ねじ曲げられていたスピラの歴史を正しくとらえ直し、そこから新たな時代への教訓を見出だそうという運動ですな。
真実運動に関わった者たちは、各地に埋もれたスフィアを探し始めました。それらに記録された映像を研究して、スピラの真実の姿を掴もうとしたのです。
まぁ、若い連中の大半は、ただ冒険が楽しくてスフィアを探しとるようです。『スピラの真実を解明する』という意義を、理解しておるか怪しいものですわ」
「怪しいですか・・?」
「怪しいですなぁ」
軽く笑うと、メイチェンはアヤを見る。
「真実運動の立役者は、トレマといいましてな。アヤ様はご存じですか?」
「私は、真実運動より先にスフィアを探し始めたのであまりーーー」
「おそらく、トレマがそれを耳にして、寺院から離れてしまった民を呼び戻す手段として利用したのでしょう。実際、運動を通じてスピラに熱気と活力を呼び覚ましました。
それから程なくして、トレマは突然、新エボン党なる組織を設立しましてな。
1年ばかり前でしたかーーー彼は、真実運動のために各地から届けられたスフィアを、独占してしまったんですわ。運動に共鳴してスフィアを探していた者たちが腹を立て、スフィアハンターを組織化し、無人になっていたグアドサラムを拠点にして活動を始めました。まぁ、ピンからキリまでおるようですがーーー」
的を得た指摘に、こんどはアヤが苦笑する。
「その、トレマという人は、今も新エボン党にいるんですか?」
「それが、スフィアと共に行方不明だそうで・・・」
「捜したんですか?」
「捜してないと思うわ。トレマを失って、寺院はすぐに次の指導者を立てたから」
「それが、ユウナんのお見合い相手か」
「お見合い相手?」
事情をしらないメイチェンが、不思議な顔をする。
「えっと、何でもないです。あの、お話を続けて下さい」
ユウナは焦って先を促した。
「彼の心に何が起きたものやら、是非、当人に聞いてみたいものです。さて、新エボン党はスフィアを独占しましたが、意外にも多くの支持を集めました。
党のモットーは、『ゆるやかな変化』これが当たりました。
時代の急激な変化に不安を感じた人々ーー特に、老人たちですな。の心を捉えたというわけですな」
「無理もないです。老人たちは、生まれたときから寺院を信じてきたんです。何十年も、絶対的な教えとして」
圧倒的なシンの脅威を味わえば、何かにすがりつきたいなるものだ。メイチェンは頷く。
「ですが、やはりエボンという名前に反感を抱く者も少なくありません。そんな者たちをまとめたのが、青年同盟のリーダー、ヌージですな。ヌージは、かつて討伐隊に所属し、死をも恐れぬ戦いぶりで尊敬された人物です。彼のことは、アヤ様の方がご存知でしたな」
「お会いしたのですか?」
「はいな、1度だけですが。今日は門前払いです。以前、彼が言っておりました。歴史に興味を持って真実運動に身を投じてスフィアを集めていたわけですが、それを新エボン党が独占してしまった。
党のやり口に反発し、若い仲間を集めて青年同盟を立ち上げたとーーー青年同盟は、主に若者からの支持を集め、今や新エボン党に匹敵する組織となりました」
あぁ、だから、その頃から自分を訪ねてくる老人たちの相談事に、青年同盟と新エボン党がらみのことが多くなったんだ。
ユウナは納得した。
「しかし、青年同盟に集う若者たちを眺めていると、その若さがつくづく羨ましくなりますなぁ。
活力も時間もたっぷりあって。それに引き換え、あたしなんぞは飽き飽きするほど年をとってしまいました。スピラを歩き回って知識をため込んでも、知ったそばから忘れてしまいます。
ここだけの話、自分の年もよく覚えとらんのですわ」
「またまた~」
年を覚えていないと言うメイチェンに、リュックは笑う。つられて、メイチェンも笑った。
語りも一段落すると、陽は既に傾いている。そろそろ船に戻ろうと立ち上がる。
送っていこうと言うと、暫く青年同盟の宿舎に厄介になると返事が戻ってきた。
「そうそう、ユウナ様」
立ち去ろうとした時、呼び止められる。
「なんでしょう?」
「差し支えなければ・・握手していただきたいのです。シンを倒したその手に、触れてみたいんですわ」
いいですよと、笑顔で右手を差し出す。
「おぉ、すみませんなぁ。異界へのよい土産となりますわ」
「そんな・・」
メイチェンは、その白くしなやかな指ごと両手で握った。するとーーー
「はて、これは・・・?」
何かが、流れ込んでくる。
遠い日の、憧れーー聡明で、美しいーー#ruby=女_ひと#]
「どうかしましたか?」
手を握ったまま黙り混むメイチェンに、ユウナは声を掛ける。
メイチェンは、ハッと我に返った。
「いえいえ、なんでもありゃしません。ユウナ様、ありがとうございました」
送っていこうと言うと、メイチェンは暫く青年同盟の本部に世話になると告げた。
ユウナたちはセルシウスに迎えを頼み、本部を後にし、今いち度、キノコ岩を歩き今度は浜辺へと向かう。
2年前、シンを倒すために沢山の人が命を落とした場所。
それを忘れてしまいそうになるほど、美しい夕陽が砂浜を暁に染めていた。
セルシウスを待つ間、ウノーたちが落としていったスフィア見ようとリュックが提案した。
アヤはスフィアを取り出すと、スイッチを入れる。
どこか、暗い場所だった。それでも、幻光虫の灯りが漂う中、死体がそこここに横たわっているのがわかった。
『こりゃヒドイや』
撮影者の声がした。男のようだ。死体の間を縫うように歩く。
『えぇっと・・・アカギ隊員選抜、最終演習の生存者はありませんーーー以上!』
声の主は、この場所から早く立ち去りたいようだ。早口にまとめる。
『勝手にまとめるな。よく数えてみろ』
そこで、映像が途切れた。
「ナニこれ?」
「よく分からないスフィアだね」
「全然わかんないよ」
「よくわからないスフィアは、寺院に売ってしまいましょう」
「高く売れるかなぁ」
「結構貯まったから、それなりの値段になるんじゃない」
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