Lv6 封印の洞窟
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「さてーーと、ひと足先に様子を見に行きますか」
ダチの姿が見えなくなると、アヤは暗闇に続く階段に足を掛けた。
暫く降りるとフロアーが設えてあった。そのフロアーの対角線上に階段は更に下へと延びる。
下へ行くためには、必ずフロアーを横切らなければならない。
ベベル寺院に未練を残した魂は、相当数いるようだ。
魔物の数が洞窟にひけを取らない。
「異界送りが出来ないか、誰かに相談ーー」
次々に出現する魔物を倒しながら、30階程降りたところでフロアーの中央で足を止める。
「ーーキノック」
集まった幻光が、キノックの形を成した。これは、自分の心が彼の姿を望んだからか。
それとも、彼の魂が自分に怨み言を云うために、自ら留まっているのだろうか。
懐かしさと哀しみが胸に渦巻く。
それを知ってか知らずか、彼に浮かんでいる笑みは出逢った頃のものだ。
「キノック・・あなたには感謝してる。利用しといて、今さらって思うよね。強くなりたかった。みんなの足手まといになりたくなかった。ただ、それだけだったの。でもアーロンはーーあなたの事を話す時のアーロンは、とても楽しそうだった。唯一無二の親友だって云ってた。それは・・信じて」
揺らぎながらもキノックは微笑み続ける。
「私も、あなたの死を背負うからーー」
アヤは右手を高く挙げる。
「燃え上がれ、紅蓮の炎ーーファイガ!」
幻光が炎に包まれた。
感慨深く見守る。炎が消えると、キノックも消えていた。
異界送りが出来ない今、消滅させるしかないことが悔やまれる。
永遠のナギ節がきて2年。
それなのに、私はまだ2年前の刻の中に居る。
深く息を吐いた。
「そろそろかなーー」
静寂の中、自分が降りてきた階段を見ていると、複数の足音が聞こえてくる。
「アヤさん、どうして危険を顧みずに独りで潜ったんですか?」
開口一番、ユウナが不満を口にするとリュックが後に続く。
「そうだよ、危ないじゃん」
「急ぐ理由でもあるのか?」
察しのいいパインに微笑む。
「もしかしたら、いるかなと思って」
「誰が?」
「トレマ」
「ねぇ、それ誰?」
「新エボン党の創設者ーーだろ?」
アヤは頷く。
「過去のスフィアを独占して、姿を消したって聞いてる。古参の僧官で、顔は知ってるけど話したことはないのよね。ただ・・強力な魔物を操る技を身につけていたって話を聞いたことはあるわ」
「どうして、スフィアを独占したのかな」
「何かしらの意図があったと?」
「まぁ、少なくともスピラの真実を知るためじゃないわね。今さらだけど・・わからないことは、ひとつでも分かった方がいいかなと思って」
4人になったことで、魔物を倒すスピードが格段に上がった。
また降りると、下へ降りる手段が見当たらなくなった。
「ここが最下層ね・・」
フロアーの中心に立つ。
「誰も居なそうだな」
「そうね、無駄足だったかなーー戻りましょうか」
踵を返そうとしたその時、幻光が集まりはじめる。
「トレマ・・・」
アヤの呟きに、トレマは嗤ったように見えた。
ひと目で生者でないとわかる顔色に、リュックは、顔を歪める。
「やっぱり死人だよ」
アーロンも死人だったがーーこの不気味さはなんだろう。
それに臆することなく、ユウナはトレマの前に立つ。
「教えて下さい。なぜ、過去のスフィアを隠したんですか?」
「人は、過去に縛られずにはいられない。故に、未来に目を向けるためには過去を封印せねばなるまい」
「過去をーー封印?」
「じゃ、みんなが集めたスフィアは?」
「消した・・幻光となって散っていったわ」
「何てことを・・せっかくの記録を」
「2年前、そなたがもたらした永遠のナギ節ーーシンという大きな敵を見失った若人は、もて余した力を意味もなく振りかざし始めた。鍛えた力を抑える心の強さを持ち合わせていなかったのだよ。
だからわしは決意した。スピラの過去を抹消すべしと。いっさいの過去をなーー
振り向く心は弱くなる。大召喚士ユウナ、お前もまた、過去を振り捨てて来たはず」
「捨ててなんていません。強くなりたいとか、変わりたいとか、思うけどーーだからって過去をなくしたら、そんなの私じゃない」
「ならーーお前はどうだ、アヤ。ブラスカとの究極召喚の旅の終焉に、どれだけのものを捨てた?数少ない親族、安寧な生活、愛する男ーー
寺院にお前が心許せる者は居たか?かつての恋人の友に邪な想いを寄せられ、挙げ句、兵を集める寄せ餌にされていたな。
あるいは、自分の目的の為にお前を利用しようとするグアドの男。それらは捨ててきたーーいや、捨てたい過去ではないのか?」
アヤは静かにトレマを見据える。
「私の過去は、誰かに命じられたからじゃない。全ては自分で選んだ結果。例えどんなに辛い過去も、その中に忘れてはいけない人たちがいるからーー捨てる気はこれっぽっちもないわ」
「おまえがおまえであることに、如何なる意味もありはしない」
「アナタに意味はなくとも、私には意味があるの。今までの浅はかな考えも愚かな行為も、あの人を愛して傷つけて、あの人に傷つけられて愛されたこともーー私でなければいやなのよ」
「そうかーー過去を捨てる気のない者に用はない」
もう用はないと、トレマは幻光に帰っていく。
「そりゃあ捨てたい過去を抱えている奴も、スピラにはいるだろうけどさ。でもーー」
「あたしは、今のユウナんも過去のユウナんも好きだから、どっちも捨てないで欲しいんだ。アヤもね」
「ーーありがと。リュック、パイン」
アヤが礼を云うと、リュックは彼女の腕に自分のそれを絡める。
「もう心配かけないでよ、アヤ」
「ーーうん」
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