Lv5 アカギスフィア
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何度か班編成を繰り返し、もう半年も熱砂の上で、訓練は続いていた。
砂を撒き散らし、模擬弾が小さいが炎をあげる。
「キツイな」
「訓練だってのにな、3番隊の奴、マジになってよ。おわっーー!!」
近くに着弾した模擬弾に、ギップルは飛び退いた。
腹這いになって様子を伺う彼に
「君、アルベド族だろう?どうしてアカギ隊の試験を?」
バラライが訊ねると、銃口を覗き込みながら
「アルベドだって、スピラを守りたいって。本当は討伐隊に入りたかったけど、俺らは仲間外れだからな。それに、こういう武器なら、俺らの出番だ」
「これねぇーー老師が許可しても、みんな受け入れるかな」
改めて、繁繁と銃を見ていると
「無駄口を叩くな。報告されるぞ」
ヌージが記録係に一瞥をくれると、バラライがヌージに近づく。
「僕はバラライ、ベベルの出だ。君は?」
答えずにいると、ギップルは苦笑した。
班編成が通達されて、直ぐの訓練だった為、4人はまだ名乗りあっていない。
「俺のせいだな。アルベドになんか名前教えないって奴、多いんだ」
「ヌージだ」
「あぁ、あのーー」
「俺、アルベド族のギップル!」
名乗ったヌージに、ギップルはバラライを遮る。
「君は?」
バラライは記録係にも訊ねる。
「パインーー」
ーーーーーーーー
訓練だったが、ギップルたちは劣勢だった。
「弾は!?」
「これで最後だ!」
「俺たちもな」
「諦めるな!」
「誰が!」
「どうする?」
「お先にどうぞ」
「びびってんの?」
残り少ない弾丸を分け合いながら、この状況を打破する手立てを模索していると
「バーンッ!」
ギップルの声と同時に、弾丸がヌージの背後に跳んだ。振り向いた彼の目に、崩れていく魔物が映った。
「余計なことを」
「ヌージ・・噂は聞いています。あなたは常に死に場所を探していると」
「マジかよ」
「なかなか死ねないんだ」
助けられた礼の代わりに、パインに向かって苦笑する。
「今も戦いを投げて、死ぬ気でしたね」
「よく見ている。最高の記録屋だな」
「あなたは最高の兵士でした。討伐隊は、不死身のヌージを決して忘れないでしょう。なのにーー」
「俺の命だ、好きにするさ」
ーーーーーーーー
1年間の訓練を終え、最終選抜の地へ船で移動していた。
ギップルたちは夜の甲板でマストにもたれ、お喋りに興じていた。
「ミヘンセッションって、どう思う?」
「あの兵器なら、いけるんじゃね」
バラライの問いに、ギップルは軽い口調で返す。
「そんなに凄いのかい?シンすら倒す、機械の兵器か。少し怖いなぁ」
「機械機械って拘るなよ。使い方を間違えなきゃいいんだ。なぁ、シンを倒せばナギ節だ。何して暮らす?」
「想像できないよ」
「退屈そうだな」
ヌージの答えに、バラライは笑う。
「退屈だって言いながら、死に場所を探すのかな、ヌージは」
「じゃあ、ヌージが退屈しないように3人で遊ぶか」
「ガキ」
心底イヤそうに言うヌージに、バラライとギップルは笑った。
その笑い顔のまま、バラライはスフィアを持つパインに顔を向ける。
「君も、一緒にどう?」
ーーーーーーーー
キノコ岩街道の谷底にある洞窟の前で候補生が整列した。
キノックは満足げに彼らを見渡す。
「最後の演習だ。この奥には何かがいる。危険な存在らしいが、情報はない」
「そいつを倒せと?」
「まずは調査だ。奥まで探れ。何を見たのか報告してもらう。生きて戻った者を合格とする。晴れて、アカギ隊の一員だ」
「「ハッ!!」」
「人数分の武器はない。自分の武器を勝ち取るのも訓練の内だ。それでは、アカギ隊員選抜最終演習、始め!!」
人数分の武器はない。一瞬動揺が広がったが、直ぐに武器の取り合いが始まる。
ーーーーーーーー
闇には、無数の幻光虫と、狂気が満ちていた。
「ウワッァ!」
「待ってくれーー!ウワッァ!」」
「アハハハハーーッ!」
憑かれたような笑い声をあげ、突然、候補生たちは互いを撃ち始めた。
荒い息づかいの中、銃の乱射音と叫び声が洞窟に響き渡る。
ーーーーーーーー
「何で殺し合いになるんだよ!」
「みんな、一体ーー」
「確かに危険な存在だな」
この奥に居る『何か』
「そいつの仕業ってか、マジか!?」
「確かめて戻れば、合格だ」
ヌージは言うが、バラライは踵を返す。
「僕は降りる!候補生同士で殺し合いなんて!」
「じゃあな」
「待てよ!」
どちらを追うか一瞬迷ったが、ギップルはヌージを追った。
ーーアハハハハハハハーーッ!!
誰ともわからない笑い声が響き渡る。と同時に、ひときわ光る幻光虫がひと塊、ヌージを包み込んだ。
堪らず悲鳴をあげる。
「アアアアアーーッ!」
そこへ、外へ向かった筈のバラライが現れる。
「ヌージ!?」
まだ苦しみが残る身体で、ヌージはバラライの額に銃口を定める。
「くそっ、ヌージ、ダメだ!」
ギップルはヌージのこめかみに銃口を向けた。
「お前もだ、ギップル」
バラライもギップルに銃を向ける。
膠着状態が続いたが、堪えきれなくなった3人は喚きだす。
「やめて!」
パインの制止に3人は我に返る。
銃を下ろし、荒くなった息を整えながら、それぞれ目線を外した。
無言のまま洞窟の入り口に戻ると、キノックの元へ急いだ。
「報告を聞こう」
「中に、中に入ったらすぐにーー」
「殺し合いになった。たぶん、幻光のせいだ」
「僕たちの体にも幻光がまとわりついて」
・・
「あれが見えた。不思議な幻だった」
促させるのももどかしく、口々に言う。
少し煩わしそうに、キノックは眉を潜める。
「整理して話せ。どんな幻だ」
「機械です。とても大きな。低く唸って、震えてーーあんなの見たこともねぇ」
「幻が見えたら、妙な気分に襲われた。怒り、恐怖、後悔ーーそれに絶望だ」
「僕もだ。理由はわからないけどーー悲しくなった」
「あぁ・・誰かの気持ちが、そのままーー俺の心に入ってきたみたいだった」
「誰か?誰だというのだ」
答えられないヌージに、キノックは痺れをきたす。
「報告は以上だな」
パイン以外が頷く。
「直ちに討伐隊司令部に向かえ。作戦終了まで、老師を御守りするのだ。それが、アカギ隊員としての初仕事になる」
「俺ら、合格か!」
「もちろんだとも」
「よかったな」
4人はジョゼ海岸に向かうべく歩き出す。その時、パインは何気なく振り返った。
その目に、キノックの護衛が銃を構える姿が映る。
「みんな、逃げて!!」
「貴様!」
銃声が響く。振り返りかけたギップルたちは、散り散りに逃げ出す。
ーーーーーーーー
「みんなーーどこ?」
揺れる画像の中に、ドレス姿の女が立ち尽くしていた。異界送りをする召喚師も小さく映っている。
ーーーーーーーー
ミヘン街道の、旅行公司前に3人は座り込んでいた。
パインはスフィアを持ったまま近づく。
「無事で何よりだ」
ヌージは微笑する。
「怒ってない?」
「どうして?」
「私のせいで、死ねなかった」
「ひとつ、貸しだな」
「どうして、僕らと一緒に?」
キノックが自分たちを殺そうとしたと云うことは、当然、アカギ隊の話は反故だろう。
・・
あれを見ていないパインは、一緒に居る方が危険だ。
バラライたちの気持ちを察して、パインは口を開く。
「あんたたちが何を見たのか、私も知りたい」
「俺らも全然わかってねぇよ」
「でも、いつか解き明かす。その時は、君にも話すよ」
「うんーー」
「さて、俺たちが生きてるって知ったら、老師は喜ばないだろうな。3人一緒にいるのはまずい」
「バラけるか」
「それが賢明だね」
「もう仕事は終わりだろ。いつまで撮ってるんだよ」
「あーー」
ヌージは腕を伸ばし、スフィアのスイッチを切った。
だが、話している3人にパインは悪戯心が湧いた。
「記念撮影」
しばらくすると、3人は別々の方向に歩き出す。
ギップルとバラライをスフィアで追っていると、突然、後ろから撃たれる。
「誰!?」
振り向くと、銃を構えるヌージが目に入る。ヌージはパインを睨み付ける。
「いつまで撮ってるんだよ!!」
怒号と共に、銃口が火を吹いた。
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