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以前は、身体がすぐに浮かんでしまって、潜っていることが出来なかった。
でも、今は数を数えながら、ゆらゆらと揺れる海面の光を楽しむ余裕もある。
ーーー37 38 39 40 41
「プハッーーー」
2分41秒ーーー最高記録
記録を更新して、上機嫌で水着の上に衣服を着けていると、見計らったようにワッカが浜辺に迎えに来る。
「ーーーユウナ、時間だあ!」
「今行くーー」
並んで歩いていると、ワッカが楽しそうに話し出す。
「ずいぶん潜っていられるようになったんだな」
「ワッカさんにはかないません」
「ハハッーー俺、もうダミだなぁ。トレーニングだって、ご無沙汰だぁ」
ワッカは貫禄のついた腹を擦りながら笑う。
2年前、旅から帰るとワッカはルールーと結婚した。
程なくしてルールーは身籠り、ワッカは子供の誕生を心待ちにしている。
「ぷにぷにだしね。ワッカさんが産むわけじゃないんだよ」
あれから2年ーーー私、2分も潜っていられるようになりました。
長く潜るためには、体力だけじゃなくて、いくつかのコツが必要でーー
言葉で説明されてもわからなかったけど、何度も試して、最近やっとわかってきたんだ。
ねえ、あの頃は、そんなコツがあるなんて考えたこともなかったよ。考える余裕なんてなかった。
永遠のナギ節ーーー
それは、私の2分41秒と、ちょっと太ったワッカさん。小さなーーでも穏やかな幸せ。
村へ戻ると、真っ直ぐに寺院へ向かう。
寺院の中は、明るい太陽に照らされ波の音が聞こえる外と違い、薄暗く静かだった。
ユウナが中へ入ると、すぐにひとりの老人が近づいて来る。
「タスジオと申します。2年前、スタジアムで遠くからお姿を拝見していたのですが・・」
しみじみと見てユウナを見て、ため息混じりに呟く。
「こうして、間近でお目にかかるとなんとまあ、お美しい・・・」
「ありがとうございます」
ユウナは丁寧に礼を言うと、本題に入ってもらう。
老人の声が、鬱々と寺院内に響く。
「今日は、孫のことでお願いがあります。孫が、青年同盟に入ってしまったのです。
まあ、あの同盟も悪くはないのでしょうが、私も妻も、新エボン党員でしてな・・
もちろん、息子夫婦も同じです。孫も、以前は集会に参加していたのですが、ある日突然ーー同盟には若い者たちが多いので、孫にとっては刺激的でいいのかもしれませんがーーー」
あれから、スピラのあちこちで、幾つものグループが結成されました。
新しい時代を、どうやって生きていくべきか。これからのスピラは、どうあるべきかーーー
みんなが、自分たちの時代を探しているところです。
「孫たちは、なんというか、急ぎすぎている気がするのです」
いろんな考えがあるから、時には対立も起こります。中には、こんな時代を不安に思う人もいるみたい。
実は、私も時々ーーー
でも、今はこれでいいんだ。そう思って暮らしています。
ひと通り訊いた後、ユウナは暫く考え
「お気持ちはわかります。でも、タスジオさん。一度、お孫さんと話し合って見てください。端から見ると危なっかしいかもしれないけど、スピラを思う気持ちは、きっと同じですから」
村に戻ってから、このようにユウナを訪ねて来る者が跡を絶たなかった。
ワッカがマネージャー宜しく調整しなければ、ユウナは自分の時間が持てなかったかもしれない。
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