パーティーへの招待状
ブルームーン
夜空に浮かぶ 青の月
旅の途中、何度も見上げたあの月を
今日はこの身に纏ってみる
グラスに浮かぶ月を揺らす、アナタの掌で
この月のようなドレスごと 私を包み込んで
寒さに震えた あの夜のように
そういえば、待ち合わせなんて何年ぶりだろう
あまり馴染みのないザナルカンドの人波の向こうに、ひと昔前の自分とアーロンを思い出した。
結婚してからは待ち合わせなんてしないし。10年振り?
こんな格好も、お式以来だな。
店のショーウィンドウに、自分の姿を映してみる。
白い肌を優美に飾るのは、サファイアのような気高き青のドレス
肩を出したタッキングの胸元に、小さなフリルと輝きを放つビージング
縦に揺らめくフリルのスカート
長い黒髪には、腰でリボンのように結んだフリルにつけた、コサージュと同じ花を挿した。
「このドレス、アーロンはまだ見てないのよね。気に入ってくれるかな?」
「似合っているな」
不意に、真後ろから声がした。
「アーロン」
振り向いたアヤの目に、シャンパンゴールドのタキシードに身を包んだアーロンが映った。
「おかしくはないか?」
窮屈そうに、猪首に締めたタイを気にしながら訊ねる。
着慣れない装いにアーロンの照れと緊張を感じとって、アヤは微笑んだ。
「よく似合ってるわ。私が選んだタキシードだもの」
ガッチリした体躯が目立ちすぎないように、衿に黒の切り替えしがあるものを選んだ。それに併せた黒のベスト。
それが縦ラインを強調し、スラリとした印象を与えている。
べつに、着飾らなくとも十二分に魅力的な男だが
偶にはこうして、姿見の良い服装もいいものだとアヤは心の中で思った。
「パーティーの前に、見せたいものがある」
「見せたいもの?」
「あぁ」
頑丈なドアを押し開くと同時に、ビル風が押し寄せてきた。
「ーー!!」
アーロンが案内した先は、ザナルカンドでいちばん高いビルの屋上だった。
髪を抑えて立ち尽くしていると、アーロンの温かな掌がアヤの肩を抱いた。
「大丈夫か?」
「うん、平気。ちょっと驚いただけ」
「こっちだ」
アーロンの身体に掴まるようにして歩き、フェンスの傍へ近寄る。
「う・・わーー」
眼下に広がるのは、海に浮かぶビルの群れ。
その先にあるのは、ジェクトが自慢するザナルカンドスタジアム。
試合まで時間があるのか、スタジアムに輝く月は、まだ出ていない。
そして、どこまでも続く海。
あまりに雄大な景色に、アヤは言葉を失った。
「いい眺めだろう?」
響くアルトサクソフォンの声
「うん・・」
うっとりと、アーロンの胸にもたれ掛かる。
その身体を後ろから抱きしめ、アーロンは耳元に唇を寄せた。
「ジェクトが教えてくれた」
「ジェクトが?」
「彼奴の、とっておきの場所だそうだ。何とかは、高い所が好きだと云うからな」
「もう・・」
それを知っているのは、恐らくアーロンとブラスカだけだろう。
きっと、愛息のティーダにも、教えていない。
この場所で、彼はたった独りで何を想うのだろうか
「海ーー広いね」
抱き締める大きな手に、自分のそれを重ねる。
「あぁーー」
沈みゆく夕陽に彩られていくザナルカンドの街を、2人は見つめた。
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