パーティーへの招待状



吉野



あなたの心の奥底に沈む、白い花びら


爛漫の姿より、散るサマが美しいと讃美されるその花は

儚さより、潔さを求められる。




ーー潔く散るだぁ?ジョーダンじゃないぜ。俺はな



足掻いて足掻いて、地べた這ってだってーー




         生きてやる




     うん。ずっとずーっと、一緒に生きるよ。







「あ~、遠いな~。どうせなら、スタジアムの前で降ろしてくれりゃあいいのによ~」

額の上に手をかざして、銀時は彼方に聳え立つビルの隙間から見えるスタジアムを、恨めしげに眺める。

「しょうがないじゃない。宇宙船じゃ、街の中に入れないもの。海の上で降ろされなかっただけでも、有り難いと思わないと」

大きな紙袋をゆらゆらと揺らして、蒼猫は言った。
その蒼猫に一瞥をくれると、銀時は頭を抱え込んでしゃがみ込んだ。

「銀さん糖分切れた。もう歩けねー」

甘えているのが見え見えの態度に、蒼猫は小さくため息をつく。

「しょうがないなーーハイ」

胸元に手を突っ込むと、いちご牛乳の小瓶を銀時の頭の上に乗せた。

「おまっ!どっから出してんだよ。だから、今日はいつもよりデカかったんだ」

「そんなコト言う人にはあげません」

一度渡したいちご牛乳の小瓶を、銀時の手から引ったくった。

「え~蒼猫~。いや、蒼猫さん。蒼猫さま。今日はとてもキレイでいらして」

「今日は?」

「いえいえいえ、今日もです」

自分を拝む姿に、仕方ないといちご牛乳を差し出す。
銀時は両手を上げて、恭しく受け取ろうとした。

「お~我が愛しのイチゴ牛乳!」

「おあずけ」

「なんだよおあずけって。銀さんは犬ですかぁ?お前は犬と付き合ってるんですかぁあ?」

「着いたらあげます。ほら、遅れるから行こ」

いちご牛乳を胸元に押し込み、蒼猫は銀時の腕を取った。




「だいたいよ~俺らARUHARUに出てねえじゃん。何で呼ばれたんだよ」

「いいじゃない、ご馳走食べれるし。残ったのタッパーに入れて、神楽ちゃんと新八くんのお土産にするんだ」

「あ、そ。逞しいこって」


腕を組んで歩いていると、ふたりの衣服が珍しいのか、すれ違う人々の視線が集まる。
取り分け、蒼猫の着物をリメイクしたワンピースが、ひときわ目立っていた。



銀色のアクセサリーをあしらった帯留を胸元のアクセントに締めた、カシュクール・ワンピース。
黒から赤に彩りを変えるそのドレスには、咲き狂うひと枝の染井吉野。
漆黒の夜空から、血で染まった大地へーー弔いの薄紅の雪を降らす。




「どしたの?銀さん」

急に立ち止まった銀時に、蒼猫は訝し気に振り仰ぐと、濁った眼で見つめてくる彼の白髪はくはつに、指を伸ばす。

「ーー!」

不意に胸に掻き抱かれ、背中を強く抱き締められた。

髪に挿した赤い実のついた金の簪が、シャラシャラと澄んだ音を上げる。




「どうしたの?」

されるがままになりながら、胸に持たれる。

「何でもねえよ」

ひとしきり抱き締めたあと、蒼猫の身体を押し返した。
とうの蒼猫は、突然の抱擁を咎めるでなく、銀時を見つめた。
彼の白い髪が、ドレスに花びらを降らせているようだった。



「行こうよ」


「かったりぃけど、そうすっか」


頭を掻きながらビルの彼方を見る彼の指先に、蒼猫は自分の指を絡めた。




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