パーティーへの招待状





 レッド・バード



      翻る 赤いコート

何時終わるかわからない、長い旅路を共に航る 赤い翼


アナタの傷みを
     アナタの苦しみを



私の瞳から隠してしまう




だから、いまだけは
私が隣りに居る、この時だけは



 涙と血で染まった翼を


     広げなくていいの






ゲートに横にある巨大な石像の陰に、アヒルはさっきから身を隠していた。

時折、目ざとい通行人が訝し気な視線を送る。
その度に、アヒルは奥へと後退った。




「ハァ~」

肩を落としてため息をつくと、アヒルはくるりと後ろを向いた。

「いっくら正装で来いって書いてあったからって、やり過ぎたかな」

うなだれて、パンプスの華奢な爪先に視線を落とす。

黒いサテンリボンがクロスするビスチェ。
スカートに羽根のようにふんだんにあしらったチュールレースが、フワフワと揺れる。

「エドは来ないし」

着慣れない赤いドレスを纏ったアヒルの眼に、うっすらと涙が浮かぶ。

「何してんだよ。こんなとこで」

「ひっ!」

ポンと、肩に体温を感じない手が置かれた。
眼だけを動かして見る。白い手袋のオートメイル。

「お前なぁ、彼氏に悲鳴上げるヤツがいるかあ?」

「う・・ゴメン」

呆れた声に、またうなだれた。

「どうでもいいけど、顔見せろよ。俺は、おまえの背中と話しをする気はねえぜ」

肩に置いた手を、腰に当てる。
アヒルはまだ、向こうを向いたままだ。

「・・恥ずかしい」

「はあ?」

「恥ずかしいの!こんなドレス着て来ちゃって・・」

髪につけた花と同じように、赤く染まった耳が、後ろ姿からでも分かった。
恥じらう姿が初々しくて、エドワードは笑いを堪える。

「いいじゃねえか、正装して来いって書いてあったし」

「そうだけど」

「たくっ、いい加減、こっち向けよ」

今一度、肩に手を置くと、今度は強引に引いた。




「・・・・・・・・・・・」




何も言わない彼に恐る恐る視線を上げると、エドワードの黒いタキシードが目に入った。


白のウイングカラーシャツに、黒の蝶ネクタイ。
ジャケットは、絹の剣襟。靴は、白いエナメル。

始めて見るエドワードの礼装に、アヒルは言葉を失った。
だが、それはエドワードも同じらしく
彼の視線も、アヒルに釘付けとなっていた。


なだらかな肩。白い胸元。
艶やかな唇に、潤んだ瞳。

首には、透明な大小のビーズを繋ぎ合わせた花が、可憐に咲いている。

いつもと違う雰囲気に、エドワードは喉を鳴らして、生唾を飲み込んだ。


「エド?」

その声にハッと我に返ると、乱暴にアヒルの手を握る。

「ほ、ほら、行くぞ!俺は腹減ってんだよっ!」

自分と同じように顔を赤くし、グイグイと手を引っ張る彼に、アヒルは破顔した。


「うん!」


ふたりは、ゲートの中へ吸い込まれて行った。




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