鋼の錬金術師 ちょっとだけ恋人気分
人だかりから離れても、2人はまだ腕を組んで歩いていた。
ホークアイの歩幅に合わせ、アルフォンスはゆっくり歩く。
「珍しいのね、独りなんて」
ホークアイは、笑みを浮かべたまま尋ねる。
「あ、あの、兄さんはまだ、ホテルで寝てます。それで、退屈だったんで、本を買いに来たんです」
「そう、災難だったわね」
鎧と美女のカップルに、道行く人々が好奇の視線を向ける。
指を指す人。連れとひそひそ話す人。
いつもなら、平気なのに
アルフォンスは思わず俯く。
「あ、あの、ホークアイ中尉・・う、腕・・」
ホークアイは立ち止まると、アルフォンスを見上げる。
「・・イヤ?私とこうするの・・」
いつも以上に、優しい笑みに
「そんな!イヤだなんて!」
慌てて、手を振って否定する。
「ただ、中尉までボクのせいでイヤな思いをしたら・・」
申し訳なくてーーと、小さな声で呟いた。
ホークアイは、俯くアルフォンスを見つめた。
あんなコトがなければ、こんな思いをしなくても済んだろうに。
優しい彼の心中を思い、顔を曇らせた。
でもーー
「ねえ、アルフォンス君。私は、あなたやエドワード君と知り合えて、とても嬉しいと思ってるわ」
「ほんとですか?」
顔を上げるアルフォンスに、一層優しい瞳を向ける。
「えぇ」
きっと知らないでしょうね。
あなた達が司令部を訪れる度に、どれだけあの人を癒やしているか
あの人が、どれだけあなた達を想っているか
だけど、あの人も不器用だから、伝わらないかもしれないわね
あなたのお兄さんと一緒でーー
「・・あの・・ホークアイ中尉?」
急に黙ってしまった彼女に、不安になる。
「あ、ごめんなさい。ボーっとして。ねえ、アルフォンス君さえ良ければ、これから本当にデートしない?エドワード君が、起きるまで」
「えっ!?ボクでいいんですか!」
ホークアイの申し出に、弾んだ声で返事をした。
「えぇ、勿論よ」
腕を絡めたまま、2人は休日の街へ紛れて行った。
おまけ
