鋼の錬金術師 ちょっとだけ恋人気分



本屋から出て来たアルフォンスは、紙袋を抱えてご満悦だった。

「面白そうな本が見つかって良かった。
これでしばらく、退屈しなくてすみそうだ。ホテルへ戻ろ」

周りに気を配りながら、アルフォンスは歩き出した。
そこへ、話しをしながら歩いていた、二人連れがぶつかった。

「うわっ!」

「あっ!」

ゴンッと音を立て、男の頭が鎧にぶつかった。

「いってぇ~!あぶねえじゃねえか!!前見て歩けよ!!」

「ごめんなさい」

余所見をしていたのは、そっちなのだが。
人のいいアルフォンスは、つい謝ってしまう。

「大体、なんでこんな街中で鎧なんか着てんだよ!図体デカいのに、迷惑だろうが!」

そう怒鳴られて、アルフォンスは萎縮する。

「あ・・」

それを見たもうひとりの男が、ニヤリと笑った。

「おい、コイツの顔、きっとブサイクなんだぜ。だから鎧なんか着て、隠してるんじゃねえか?」

「はあ~ん?そうか」

ジロジロと、無遠慮にアルフォンスを見る。

「おい、鎧脱いで、顔見せろよ」

鎧に手を掛けられ、慌ててそれを止める。

「えっ!?あっ!止めて下さい!」

「いいから見せろよ!どうせ、女にモテないから隠してんだろ!?」

「ちょ、ちょっと!」

騒ぎに足を止め、遠巻きに人だかりが出来る。
絡んできた男たちを投げ飛ばすわけにもいかず、アルフォンスは途方に暮れた。

「ヤバいッスね。ちょっと行って来ます」

ハボックが行き掛けると、ホークアイがそれを止める。

「待って、私が行くわ」

「中尉?」

怪訝な顔をするハボックに構わず、ホークアイは、頭の後ろの髪留めをはずした。
スッキリとまとめられていた髪は、波を打って背中に流れ落ちる。

その髪に併せるように、控えめなキャットウォークで、人だかりに向かって歩き出した。



「ヒューッ!!」

ホークアイの後ろ姿に、ハボックは口笛を吹いた。


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