FFⅫ それは悪夢か良き夢か
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【一見の客】
扉が開くと、赤い衣に懐手の、大きな剣を携えた白髪混じりの長身の男が入って来た。
「邪魔をする」
「いらっしゃいませ」
男はカウンターに座る。
自分の周りにも身長の高い男が多いので、さほど驚きはないのだが。
彼の右目を塞いでいる傷痕には、一瞬、目を見張ってしまった。
「なんになさいますか?」
「コーヒーを頼む」
「味の好みはございますか?」
「そうだな・・・・」
嗜好を訊いた後、豆を選ぶ。
苦味の強い、ボンジョルノを手にした。
「どうぞ」
漆黒の闇のような艶やかなコーヒーを、シンプルな白い陶磁のカップでサーブした。
男はブラックのまま、ゆったりとカップを口に運ぶ。
コーヒーをひと口含むと、濃い苦味と同じく豆の旨味が広がる。
「うん・・・・美味い」
満足気に笑みを浮かべる男に、トビーは少しホッとした。
「お客様、旅の方ですか?」
「あぁ・・色々な世界を渡り歩いている」
「よろしかったら、訊かせてください。世界のことを」
「ふっ・・」
男は軽く笑うと、自分が生まれた世界のこと、青い空と同じ瞳の少年と過ごした世界のことを話し始める。
トビーも、恋人の空賊と旅に出たことはある。
だが、それはどれも短いもので―――
ひとつの世界をじっくり味わったことはない。
アルトサキソフォンの声が紡ぐ男の物語に、トビーは聴き入った。
「ーー随分、話し込んでしまったな」
気がつくと、陽はすっかり傾き、橙色の日差しが窓から差し込んでいる。
男は立ち上がった。
「あ、申し訳ありません。お引き留めして」
「いや、構わん。俺も楽しかった。また、寄らせてもらう」
「お待ちしております」
代金を払った男が、扉を開けようとした時
「おっとーー失敬」
先に扉を開けたのは、バルフレアだった。
「いや、此方こそ失礼した」
そのまま扉を押さえるバルフレアに、軽く目礼して出て行った。
「フラン?」
バルフレアが見ると、フランは先ほどの男の背中を見送っていた。
「どうした?」
「彼ーーなかなかの強者ね」
「あぁ・・俺も、そう思う」
ヒュムにーーまして男に関心を示すとは。
珍しいと思ったが、自分もあの男には一目置いた。
一瞬で、惹きつけられてしまったのだ。
「また、逢ってみたいわ」
「逢えるさ、旅を続けていれば、きっとーー」
「そうね」
2人は、クロム・グリーンの中に入っていった。
終
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