Fullmoon
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「フ~」
野宿の準備をしながら、アーロンが大きな溜め息をついた。
それを見たジェクトが、眉をしかめる。
「なんだよ、アーロン。でっけぇ溜め息なんかついて。幸せが逃げっぞ」
「貴様に聞こえるようについたんだ。第一、おまえが旅に加わった時点で、幸せなんかとっくに逃げ出している」
「んだとっ!!ケンカ売ってんのかっ、てめえ!!」
組み上がったテントを前に、日に一度はやらなければ気が済まない、口喧嘩が始まる。
ブラスカは笑っているが、アヤは困った顔で口を噤んだ。
「二人とも止さないか。アヤが悲しむよ」
ジェクトの胸倉を掴み掛からんばかりだったアーロンは、その声にハッとした。
「あ~別に喧嘩するつもりじゃないんだぜ、アヤ。アーロンのやつが絡んでくるからだなーー」
「だからそれは、お前がだなーー」
「アーロン」
今度は、少し厳しい声が止めた。
「ジェクトだって悪気はなかったんだ。いつまでも責めてはいけないよ」
「・・はい」
師であるブラスカに諫められ、ようやく言い合いが終わった。
悪気はなかったーーー
ブラスカの言葉に、嘘はない。
ジェクトが幻光河の渉らせ人、ハイペロ族が操る巨獣シパーフを斬りつけたのも、ブラスカを守ろうとしたのだろう。
たとえ、酒に酔っていたとしても。
彼の話を聞いていれば、不器用だが家族思いの父親だとわかる。
だが、それとブラスカが危険な目に遭うのとはまた別だ。
其の思いが、アーロンに邪慳な態度をとらせるのだろう。
食事が済んでも、気まずい空気は変わらなかった。
「アヤ、火の番を頼んだぞ」
野宿の時は、アヤ、ジェクト、アーロンの3人で焚き火の番をしている。
最初はアヤで、次はジェクトとアーロンがその時々で順番を決めた。
「あ、アーロン。今夜は、私ひとりでするわ」
「ひとり?朝までひとりでやると言うのか?」
頷くと、アーロンは渋い顔をした。
ただでさえ魔物が多いと言うのに、夜は更に増える。目を覚まして加勢するまでに、無事ではすまないかもしれない。
休もうとしていたジェクトとブラスカも、驚いてアヤを見た。
「ダメだ。独りで夜どうしなんぞ、危険過ぎる。いつもどうり、お前は最初だ」
「大丈夫よ、腕だって上がってるもの。お願い、今夜だけだから」
「しかしーー」
「アヤ、どうして独りでやりたいんだい?」
「あ、えっと・・・」
珍しく頑なな態度に、ブラスカが不思議そうに訊ねるが、アヤは口ごもってしまう。
「まあいいじゃねえか、俺たちがすぐに起きれば」
「仕方ないね・・・アヤ、何かあったらすぐに起こすんだよ」
「ありがとう、ブラスカ!」
ブラスカに促され、アーロンは渋々テントに入った。
焚き火に薪をくべながら、空を見上げる。
今夜は雲が多く、星も出ていない。だが、その方がアヤには都合が良かった。
月が出ればすぐにわかる。膝を抱え、冷えた空気の寒さをこらえた。その時ーー
「アヤーー」
テントからアーロンが出てきた。隣りに座ると、手にした毛布でアヤと自分の身体を覆う。
「一緒に見張ろう」
暖かい毛布の中で、肩を抱いた。
「うん・・・」
しばらくして、アーロンが訊ねる。
「なあ・・どうして今夜にこだわるんだ?」
「・・・満月がね・・見たかったの」
「満月?それで?」
「それだけ」
「・・・・・」
アヤの返答に、アーロンは黙ってしまった。
「呆れた?」
「あ・・いや・・」
顔を見上げれば、否定しながらもその通りだと書いてあった。アヤは微笑むと、アーロンの胸にもたれて空を見る。
「雲が晴れてきたな」
つられて空を見上げていたアーロンが呟くと、毛布の中で指を絡ませて祈った。
たとえーー迷信だとしても
「アヤ・・・」
肩を抱いていた掌が、腰まで滑り降りてくる。
思わず身を反らせると、アーロンが顔を寄せてきた。
彼の頭上の月が、瞳に映る。
満月
蒼い月
願いを叶えてくれる
蒼い満月
どうか どうか 叶えてください
月のように 静かに佇む彼の人の
苦しみに耐える 彼の人の
悲しみが待っている 彼の人の
心が少しでも安らぐように
涙が 少しでも零れなくてすむように
私の愛する彼の人が
私との幸せを 夢見るように
唇が触れると、アヤはやっと目を閉じた。
【Bluemoon】
あとがき
うろ覚えなんですが、ひと月に2回満月が見える時があって
2回めの月を見ると願いが叶うって話しを読んだんですよ。
そこから、アーロンの話しを考えました。
アーロンはブリッツをやらないので、無理にスフィアプールを出さなくてもいいかなと(笑)
7/7ページ
