Fullmoon
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彼は、なんの変哲もない水の固まりに
輝きを与える もうひとつの太陽
与えられた輝きに、それはまるで、真昼の空に 白く光る月のよう
頭上に七色の虹を飾り、夜とは違った美しさを魅せる
その輝きの中を
ときに華麗に
ときに俊敏に
彼は太陽を背に 飛翔する
髪に 金色の光りを纏い
瞳に 空を映して 今日も
【月を照らす太陽】
「あ、いたいた!」
おやつを見つけた子どものように、ティーダは近づいた。
「お~い、ワンコ~!」
ティーダの前を歩いていた女性は、ムッとした顔で振り返った。
「何!?ワンコって」
追いついて、彼女の顔を覗き込みティーダは笑う。
「ちっちゃくって、すばしっこいから。子犬みたいだろ」
笑うティーダに、口を尖らせる。
「だから~!私にはアヤって名前があるの!!」
「はいはい。アヤって名前の子犬だろ」
ティーダはポンと、アヤの頭に掌を置く。
「ちが~う!!」
アヤは拳を振り上げると、ティーダは逃げ出した。
「ワンコが怒った~」
「待て!ティーダ!!」
さして広いと言えない、スタジアムの選手用通路を、2人は走り回る。
追いかけてくるアヤを肩ごしに振り返り
「なあなあ、このあと予定あるっスか?」
「ん?」
アヤは立ち止まった。
「別にないよ」
「なら、ちょっと練習に付き合って欲しいんス」
息を弾ませて答える彼女に、ティーダは近づきながら言う。
「え~、練習終わったばっかりなのに~?」
「頼むッス!アヤのパス、シュートし易いッスよ」
両手を合わせて拝む姿に、アヤはまんざらでもない顔をした。
ザナルカンド・エイブスに入団して5年目のアヤは、MFとしてチームの要だ。
彼女のパスは正確で、FWから絶大な信頼を寄せられている。
今年、鳴りもの入りで入団したティーダも、気後れすることなくチームに溶け込んでいた。
早くもムードメーカーに成りつつある彼に、アヤは妙になつかれている。
「別にいいけど・・」
「いいけど、なんスか?」
「君とあんまり仲良くしてると、ファンの子が・・」
アヤは顔を曇らせた。
女の子のファンが多いティーダは、スタジアムの外でいつも囲まれている。
同じ選手とはいえ、親密にしているとファンから睨まれてしまう。
「大丈夫。ヘンなこと、させないッス!」
「頼んだよ~」
プールの中に飛び込んだ。
水は傾いた陽に照らされて、オレンジ色にゆらゆらと揺らめいている。
陽の下で、ティーダの金髪が魚の鱗のように、煌めいてなびいた。
アヤがパスを出す。
右に左に出すパスに、ティーダは迷うことなく、シュートを放つ。
別に、打ち合わせをしたわけではない。
この1年で培って来た、阿吽の呼吸は、チームを何度となく勝利へ導いた。
ティーダの動きを見ていたアヤは、首を傾げる。
『改めて練習する程、動きは悪くないのに・・』
それに、そろそろ息が限界だ。
アヤはティーダに近づいた。
プールを出ようと、ティーダに腕を伸ばす。
その腕を逆に掴まれ、引き寄せられた。
ティーダの青い瞳が、すぐ目の前にあった。
イタズラっぽく笑う。
ーーえ?
柔らかい感触が、唇を塞いだ。
背中に、しなやかで、それでいて逞しい腕が廻る。
アヤの胸は、彼のそれに押し当てられて。
早鐘がアヤの胸に響く。
睫、長いな
アヤは、ティーダとキスを交わしながら、思わず魅とれた。
「ぶはっ!!」
「く、苦しかった~~」
2人は、スフィア・プールの上に顔を出した。
「誰のせいだよ~」
深呼吸しているティーダを、アヤは軽く睨んだ。ティーダは笑う。
「ごめん。でも、キスしたことは、謝らないッスよ」
自分を見つめるティーダの熱い眼差しに、アヤは俯く。
「うん・・」
嬉しかった。
そう告げようと、顔を上げれば、笑いを堪えているティーダと、視線がぶつかった。
「何?」
眉をひそめて尋ねれば
「シャンプーした後の子犬みたいだ」
「も~!またそれを言う~~!」
「アハハハハハ!ごめ~ん」
拳を振り上げるアヤに、両手を上げて白旗を降る。
「ほんとにごめんて、思ってんの~!?」
「思ってるってば~!」
自分を叩く拳を、ティーダは掌で 覆った。
「もう一回、してもいい?」
その言葉に、アヤは頬を薄く染める。
「・・うん」
ティーダは微笑むと、アヤの身体に腕を回した。
真実を告げられたティーダは、黙ってアーロンの後を歩いていた。
5番ポートを抜け、ルカ・スタジアムの前を横切る。
通り過ぎたスタジアムを見上げて、ティーダはポツリと呟いた。
「アーロン・・また、アイツに逢えるかな・・」
アーロンは、ティーダを振り返えらずに言った。
「さあ・・な」
あとがき
ティーダにはふられてないんですが、結果的に悲恋ということで。
ぶっちゃけ、ティーダは書きやすい(笑)
