腕の中の幸福
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ブラスカは、寝ているユウナを起こさないように、そっと部屋の扉を開けた。
足音を立てずにベッドへ近づくと、娘の寝顔を見つめる。
明日には、告げねばなるまい。
召喚士として、ザナルカンドへ旅立つことを
「ユウナ・・お前を独り残して逝くのは、とても辛い。でも、私がシンを倒せば・・きっと、皆の態度も変わるだろう。それまでの辛抱だ・・」
そう囁くと、ユウナは目を開けた。
「・・お父さん?」
ブラスカは目を細める。
「起こしてしまったかい?ごめんよ、ユウナ・・」
「ううん・・父さんの顔が見られて、嬉しい・・」
ユウナは起き上がり、ブラスカに抱きついた。
「ユウナ・・父さんはーー」
「いっちゃうの?」
ユウナの言葉に、ブラスカはハッとする。
「あぁ・・ユウナと一緒にいられるのは、明日までだ」
声が 震えぬうちに
涙が 溢れぬうちに
この腕が 離せなくなる その前に
「ユウナ。父さんは、悲しみを消したいんだ。
もう、父さんやユウナのように、誰も悲しい思いをしないように」
「うん・・」
「だから・・ユウナ」
「わかってるよ、父さん。ユウナは、淋しくないよ」
「ユウナ・・ありがとう・・・」
言葉とは裏腹に、ブラスカにしがみつく腕に力が籠もる。
父の気持ちを察し、自分の感情を押し殺す我が娘(こ)を、ブラスカは強く抱きしめた。
「しっかし、ブラスカよお。シンと戦うショーカンシ様の出発だってのにーー
これじゃあ何だか、夜逃げみたいじゃねえか」
ジェクトはブラスカにボヤいた。
ブラスカは、静かに頭を振った。
「これでいいさ・・見送りが多すぎると、却って決意が鈍り兼ねない」
「そんなもんかねぇ・・ま、おめえがここに帰るときには、もうちょっと賑やかになるだろうさ。
シンを倒して、英雄としてハデにガイセンパレードよ!」
ブラスカは、少し乾いた笑い声をあげる。
英雄になって、凱旋を飾るより
愛する娘が、いつまでも穏やかに暮らしを営めるように
ただ、それだけを拠り所に
「そろそろ行こう」
【腕の中の幸せ】
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