それは、束の間の・・・
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【虚構と真実を繋ぐ青】
「キーリカか・・懐かしいな・・・」
暗い海を疾走する船の甲板から、アヤはボンヤリと、海を眺めていた。
星も出ていない、肌寒い夜だ。
たなびく髪を抑えもせずに、潮風に吹かれている。
「こんな所で、何をしているのです?」
背後から男の声がし、杖と、金属音の混じる足音が近づいて来た。
「ん・・?」
アヤは振り返り、声の主を確認する。微かに微笑むと、また、海を見る。
その人物は、アヤの隣に立ち、船のへりに手を置いた。
「・・海を、見ているの」
「こんなに暗い海を?」
驚いてアヤを見る。
「何も見えないでしょう?」
彼は眼鏡の奥で、少し困った顔をする。彼の束ねた長い髪も、風に揺れる。
「うん・・その方が、いいの・・・」
時々顔を合わせる、伝説のガ-ドと崇められるアヤ。
年若く美しい彼女に、討伐隊に参加した男達は、皆、色めき立つ。
彼女は気さくで、どんな種族の人間とも話をした。
それは、討伐隊の中でも差別を受けるアルベド族であっても、変わりがなかった。
暫くの沈黙の後、彼は口を開いた。
「今度の作戦、成功すると思いますか?」
「ミヘン・セッション?」
「え?えぇ」
本当は違うのだが、作戦の大きさから言えば、そちらが重要だろう。
「どうだろう・・疑う訳じゃないけど」
アヤは俯いた。
それに答えない彼を見て、今度はアヤが訊ねる。
「まだ、死にたいの?」
「貴女から見たら、俺なんか、腹が立つ存在なんでしょうね」
随分、遠回しな肯定だと、アヤは笑った。
「あなたが死んで、それで満足なら、別に止めないわ。ただ・・」
口を噤んだアヤを、訝しげに見る。
「ただ?」
「投げ出された命を、哀しむ人がいる事を・・忘れないで欲しい」
「それは、命を投げ打った本人が?それとも、それに寄って助けられた人々が?」
「それを望んだ、全てーー」
暗い海に、消えてしまいそうなアヤの肩を、彼は強引に抱き寄せた。
アヤは驚いて、顔を上げる。
たなびく髪が、彼の首にまとわりつく。
「嫌だったら、その長い髪でくびり殺してください」
そう言うと、唇を塞いだ。
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