51話 終焉
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足音に気づき、ジェクトは首を捻った。
初めて見る顔ぶれの中に、苦虫を噛み潰した顔のアーロンを見つけると、懐かしさに眼を細める。
「おせえぞ、アーロン」
十年前と変わらぬ姿が言う。
「・・・すまん」
十年の年月を重ねた姿が答えた。
ジェクトは、彼の傍らに佇むアヤに視線を移す。
「アヤーーいい女になったな」
「ジェクト・・・」
「まったく、いくら俺がいい男だからってよ。あんまり会いに来るんじゃねえぜ」
「ごめん・・・」
やはり、討伐隊のなかにいたことに気付いていたのだ。優しい眼差しに、アヤの瞳が潤む。
ふたりに声を掛けた後、身体ごと向き直り、十年振りの息子の姿をじっと見つめた。
「・・・・・・・・よぉ」
長い沈黙の後、つい昨日別れたような顔で手を上げた。
「ーーあぁ」
「へっ!背ばっか伸びて、ヒョロヒョロじゃねえか!ちゃんとメシ喰ってんのか?あぁん?」
答えないティーダを、リュックは見つめる。
言いたいことは山ほどあったのに。唇が震えて、ティーダはうまく返事が出来ない。
ユウナたちは、黙ってふたりを見守っていた。
「ふ~・・・デカくなったな」
漏れたため息は、我が子の成長を喜ぶ父親の想いが詰まっているのだろうか。
「まだ、あんたのほうがデカい」
「はっはっはっ!!なんつっても、俺はシンだからな」
「笑えないっつーの!!」
そのために、望まぬ破壊と殺戮を繰り返してきたと云うのに。
おどけて言うジェクトに、零れ落ちようとする涙を堪えて叫んだ。
「はは・・・だな。じゃあ、まあ、なんだ。その・・ケリ つけっかーー」
そのためにスピラに連れて来たのに
「オヤジ・・・・」
「ぁあ?」
「・・・・バカ」
「ははは・・・それでいいさ。どうすりゃいいか、わかってんな」
顔を見て、決心が鈍る。それを見透かされた気がして、苦笑いした。
「あぁ」
「もう、唄もあんまし聴こえねえんだ。もうちっとで俺は、心の底からシンになっちまう。間に合ってよかったぜ。んでよ」
ジェクトは俯く。
「始まっちまったら、俺は壊れちまう。手加減とか、出来ねえからよ。すまねえな・・・」
シンに侵食されていく自分を、抑制出来ないのだろう。
怒りと嘆きと歓喜の混ざり合ったシンの咆哮は、彼の心の叫びだったのかもしれない。
「もういいって!!うだうだ言ってないでさあ!!!」
始めて見る気弱な父に、ティーダの胸が痛む。これ以上聞きたくないと、ジェクトの声を遮った。
「だな・・・」
意を決すると、くるりと踵を返しステージの中央へ移動した。
プールの中まで届いていた、観客たちの熱烈なジェクトコール
シュートが決まるたびに、嵐のように沸き起こる拍手
さあーーー最後の試合だ
「じゃあ、いっちょやるか!!」
一歩、また一歩と、ステージの端へ後退る身体から、禍々しい気が溢れ出す。アーロンたちに緊張が走る。
「あっーー」
ユウナの眼に、父の後を追うティーダが映る。
ステージの下方に渦巻く幻光虫の中へ身を投げ出すジェクトに、必死に腕を伸ばす。
「ーーーーっ!!!!」
自分を求める手に、ジェクトは呟いた。
バカヤロウ・・・・・・
おめえは全然変わってねえ ガキんときのまんまだ
思わず、笑みが零れた。
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