50話 オヤジの背中
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「悲しんでたぜ。自分の力で、スピラを苦しめるあんたのことを」
「黙れ、貴様に何が分かる」
怒りに顔を歪め、シーモアはティーダを睨む。
そのシーモアに、ティーダは更に続けた。
「分かんねーよ、お前の気持ちなんか」
「貴様は、愛されていたのだろう!父親からも、廻りからも!
私は、疎まれ、虐げられ、生まれてからずっと、苦汁を嘗めさせられてきた。
父にも、一族にも、必要な存在ではなかった。私を愛してくれたのは、母だけだ」
「そんなことはない」
「ーーどうして、そう云い切れる」
断言するアーロンに、嘲りの笑みを向けた。
「十年前、ブラスカがグアドサラムを訪れた時。
ジスカルは、側近に反対されても、お前を呼び戻すとブラスカと約束した」
「逸れは――約束事だったからであろう」
「口約束なんて、守らなくても誰も文句なんか言わないわ。だって、私たちしか知らないのだから」
「アヤ――」
「父さんは、親子が離れて暮らしているのが、嫌だったんだと思う」
幼い自分を残して、究極召喚への旅に出た父の胸中を想いながら、ユウナが言った。
「ジスカルは、口実が欲しかったのではないか?お前を呼び戻す、口実が。
一族の長として、その時は追放するしかなかったのだろうが。
内心は、お前を気にかけていたのだろう」
ジスカルが約束を果たしたのは、ブラスカに敬意を表したのではなく。
但、妻と息子を呼び戻したかっただけだろう。
「そんな・・そんな筈はない。私は・・父を殺すつもりで帰って来た。
母を死に追いやった、あの男が憎くて堪らなかった」
ジスカルが残したスフィアを、シーモアは観ていないのだろう。
父親の本心を、その父の声で聴いていたらーー
少しは憎しみが薄れただろうか。
「たとえ憎いとしても・・父親が生きていたっつーのは、俺らにしたら羨ましいよな」
「そうね・・」
ワッカの呟きに、ルールーは哀し気に目を伏せる。
「どうすれば良かったと云うのだ。
望んだのは、唯、父母の傍にいたいということだけだ。
だが、父に見捨てられーー母は、私の為に、究極召喚の祈り子となった。
私はーー母の力を、受け入れられなかった」
苦しい胸の内を吐露するシーモアに、ティーダは幼い頃の自分を重ねる。
『あんなやつ、帰って来なくてもいいのに』
「言えば良かったんだ」
「何?」
「ジスカルに、アンタなんか大ッキライだって、言えば良かったんだ!」
今までの彼の行為は、赦されることではない。
それでも、他に術はなかったのだろうか。
沈黙したシーモアに、アーロンは静かに告げる。
「お前を愛していたのは、母親だけじゃない」
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