48話 思い出
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アーロンが、旅行公司から出て来た。
それに気づいたアヤが振り向く。
何やら言葉を交わすと、アヤがアーロンの髪を結びだした。
「何だよ、オッサン。髪の毛くらい自分で結べよ」
面白くないと言った顔で、呟く。
「ティーダ、妬いてるのん?」
「妬いてねーつうの」
冷やかすリュックに、ティーダはそっぽを向いた。
「・・思い出すわね」
「何を?」
ルールーが懐かしそうに言うと、ユウナが尋ねた。
「十年前、ブラスカ様たちがビサイドへいらした時のことーー」
雲ひとつない快晴の朝。ルールーは大きな盆に朝食をのせ、討伐隊の宿舎に向かっていた。
昨日、ビサイドを訪れた召喚士ブラスカのガードたちが、ここで寝泊まりしていたからだ。
『おはようございます。朝食をお持ちしました』
声を掛けて宿舎へ入ると、六つ並んだいちばん奥のベットに、ジェクトと名乗る男が座っていた。
起き出したばかりらしく、寝ぼけ眼でルールーを見る。
『あぁ、悪いな。そこに置いといてくれ』
起き抜けでも食欲はあるらしく、テーブルに皿を並べると傍へ来た。
籠に盛った焼きたてのパンに、焼き魚に果物。
今朝、ブラスカのために子供たちが穫ってきたものだ。
質素な朝げだったが、貧しい島では精一杯のもてなしだった。
『美味そうだな』
フルーツを手に取る。
『あのーー』
ルールーは、ジェクトを見上げる。
『あん?何だい、嬢ちゃん』
カシッと音をたて、白い歯が赤い皮に刺さる。
そのままかじると、甘酸っぱい香りと共に、果汁が飛び散った。
『アーロン様と、アヤ様は・・?』
宿舎に個室はない。
この場に居なければ、どこかに出掛けたのだろうか。
『あ~、そのうちに戻って来っからさ。ほっといていいぜ』
ジェクトはイスに座ると、独りで食事を始めた。
『・・はい』
宿舎を出たが、気になってキョロキョロと辺りを探した。
「あ・・」
寺院の裏手に近い、海が見える場所にふたりはいた。
手頃な石に腰掛けたアーロンの髪を、後ろからアヤが梳いている。
ふたりの廻りは、穏やかで安らいだ空気だった。
声を掛けるのが躊躇われて、ルールーは黙ってその場を後にした。
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