48話 思い出
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「十年前ーー」
「十年前?」
「あぁ。十年前の旅の時、ルカでそのピアスを買ったな。覚えているか?」
アヤは、耳に手を当てる。
「うん」
十年前の旅の途中。
ほんの短い時間だったが、二人きりでルカの街を手を繋いで歩いた。
その時に、初めてアーロンから贈られた赤いピアス。
アーロンがいつも着ている服と、同じ色の赤い珊瑚。
「代金を払っている時、店の者に薦められたんだ。ルカで今、流行っているとな」
初めて聞く話しに、アヤは驚いてアーロンを見た。
「買ったはいいが、渡すタイミングを逃してな。
そうこうしている内に、ザナルカンドが迫ってーー
俺の頭の中は、それどころではなくなってしまった」
「・・うん」
その頃の事を思い返したのか、アヤは目を伏せる。
「気づいたのは、シンと共にザナルカンドに渡った後だった」
アーロンは、目を閉じた。
「十年間、ずっと持っててくれたのね」
目を開けると、愛おしそうに指輪を見つめる、アヤの姿があった。
「俺は、お前に残していけるモノが、何もない。
いや・・残してはいけないと思っていた。だがーー」
『ーー逝かないで』
「此を、受け取って欲しい。結婚の証しとして」
「え・・」
「いや・・か?」
驚くアヤに、アーロンの眉尻が悲しげに下がる。
アヤは、指輪からアーロンに視線を移すと
そんなことがあるわけないと、微笑む。
「嬉しい・・アーロン」
ブラスカが命を落とし
ジェクトがシンとなったこの場所で
永遠の愛を誓う
二人の導きかもしれない
アーロンは、指輪をそっと摘み上げた。
アヤが左手を差し出すと、アーロンは自分の掌を添える。
細い薬指に、ゆっくりと指輪を填めた。
「・・ありがとう」
涙が、頬を伝い落ちた。
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