43話 残像
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部屋の中央に、祈り子となった者の石像。
薄暗いその場所に、
黒い髪、青いドレス、湖面のような深い慈愛に満ちた眼差し。
親子だなーー よく似ている
アーロンは、一歩、近づいた。
「シーモアの、母君だな?」
突然訪れた侵入者に、祈り子は静かに答えた。
「そうです。貴方たちは、シーモアを知っているのですか?」
ふたりは頷いた。
「知っていて、私の力を求めるのですか?」
「俺たちは、召喚士ではない」
アーロンの言葉に、祈り子は怪訝な顔をする。
「では、何故?」
「俺たちは、貴女の子息、シーモアを倒した。
シーモアが、シンによるスピラの破壊を望んでいたからだ」
祈り子は、悲し気に目を伏せた。
「・・よいのです。憎しみの始まりは、あの子。あの子のせいなのですから。そして、あの子を歪めてしまったのは、私の過ち」
アーロンは、続けた。
「シーモアを殺したことを、貴女に詫びる気はない。
だが、シーモアのとった行動を、責めに来たわけでもない。
ただ知りたいのだ。貴女が、どんな想いでザナルカンドへーー行ったのか」
祈り子は、アーロンを見つめる。
彼女が生きていたら、恐らくその瞳から息子を想う涙が、溢れ出ていたに違いない。
「グアドとヒトとの間に生まれたあの子は、ずっと独りでした。
だから、あの子が一族に受け入れられ、父ジスカルと共に手を取り合って生きていけるようにーーそれだけを、願っていました。
それを叶えるには、私が究極召喚の祈り子となり、シンを倒すことがいち番だと思ったのです」
「だが、シーモアは、それをしなかった。
ザナルカンドに、貴女の祈り子像はなかった。奴が、ここに運んだんだな」
祈り子は、自分の像を見下ろした。
「そうです・・あの子は力を得たあまり、逆に力に取り憑かれてしまいました。
私の力では満足出来ず、より大きな力を求めてーー」
「それで、シンかよーー」
ティーダの怒りは、スピラを破壊しようとした事ではなく。
シーモアが、母親を悲しませている事に向いていた。
「あの子は、誰からも愛されず、孤独に生きていたのでしょうか?」
自分の不偶をかえりみず、我が子の心配をする母に、アーロンは静かに告げた。
「・・ジスカルが、奴のことをどう思っていたかは、わからん。
だが、奴を愛していた女をーー知っている」
「シーモアを?」
アーロンは、頷いた。
終
