39話 過去への旅 別離
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シンが復活したーー
通信手段が、碌にない世界なのに。
それはあっという間に、スピラ中に知れ渡った。
口さがない人たちは、もう、幼いユウナに期待を寄せている。
ブラスカが旅立つ時との態度の落差に、呆れるしかなかった。
ベベルから遠ざけようとした、ブラスカの気持ちがーー今なら、よく解る。
私は、彼と住んでいた家に、独りで暮らしていた。
ベベルの街外れにあるこの家は、極わずかの人にしか教えていなかった。
だから、私の顔が広く知られるようになっても、訪れる人は稀だった。
そんな中、今日訪れてきた稀なひとりのこの男は
薦められた縁談を足掛かりに、この一年でめざましい出世をしていた。
本当なら、護衛の3.4人は引き連れていそうな身分なのに。
何故だか、ここへ来る時はいつもひとりだった。
テーブルに珈琲を置きながら、探るように上目使いで顔を見る。
「寺院で、妙な噂がたっているのを知っているか?」
向かいに座ると、いきなり切り出した。
「噂?」
「伝説のガードがいると『シン』は大人しく進路を変える」
「なに、それーー」
「目撃した者がいるそうだ。現れたシンがおまえを見つけると、何もせず消え失せたとな」
「ーー偶然・・です」
「どちらでも構わん。明日から寺院の警備にまわってもらおう。
いつまでも、帰って来ない男を待っていても、仕方あるまい」
一方的に告げると、帰って行った。
テーブルの上の、手付かずの珈琲をボンヤリと眺めた。
そういえば、銃の撃ち方は、あの男に教わったっけ。思わず、苦笑する。
これは、あの男が自分に寄せる好意を、利用した罰なのだろうか。
今度は、私が利用されるのだ。
あの男の、出世の為に。
寺院にいくのは気が重かったが、このままここに閉じ籠もっていても、何もわからない。
あそこで得た真実以外に、まだあるのなら。
行こう。それしかない。
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