39話 過去への旅 別離
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空が明け離れた頃、アヤは、ようやく顔を上げた。
泣きはらした顔でシャワーを浴び、髪と身体を洗った。
タオルを巻きつけて部屋へ戻ると、荷物の中から着替えを取り出し、それを身につける。
何もする事がなく、する気も起きなかった。
ただボンヤリと、壁にもたれて座った。
これから、どうしたらいいんだろう。
彼が向かった先は、想像がついた。
険しいけど、一度は通った道だ。
独りで行けるかもしれない。
でもーー
追いかけて、どうする?
罵られて、憎まれていることを確認して
またーー泣くのだろうか。
破れた服を、横目で見る。
アーロンと暮らし始めてから、いつかは、そういう時が来ると思っていた。
拒むつもりはなかった。
寧ろ、そうなることを望んでいた。
結局、彼は口づけ以上のことはしなかったけど。
大事にされているのだと、思っていた。
自惚れだったのだろうか。
手首に浮き出た青痣が、その時のことを思い出させる。
怖かった。
身体を押さえつけた力が、胸を掴んだ掌が。
自分を見る、憎しみに満ちた瞳が。
泣いて叫んでも、止めてくれなかった。
痛みが身体中を走って、アーロンが果てるまで、耐えるしかなかった。
また、滲んできた涙に、顔を膝にうずめた。
もうイヤだ
ここにはーー居たくない
アヤは剣と荷物を掴み、立ち上がった。
逃げ出したかったのかもしれない
アーロンに憎まれている 事実から
ナギ平原を、夢中で歩いた。
いつしか陽は落ち、辺りは暗闇に包まれる。
それでも、立ち止まることが出来ない。
夜通し歩き、ナギ平原を抜け、マカラーニャの森に足を踏み入れていた。
鬱蒼とした森の、靄のような夜の闇が纏わりつく。
独りで歩くアヤは、緊張で唇が震える。
いつ、魔物が出るかわからない。
剣を握り締める掌が、汗ばむ。
「くっーー!!」
その矢先、目の前に現れたキマイラに、思わず後退る。
キマイラには、巨大なひづめの足が支える体躯の上に、3つの獣の頭部がひしめいていた。
アヤは、剣を構えた。
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