37話 過去への旅 彷徨
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峠を越えて山頂付近に差し掛かると、ブラスカは足を止めた。
「これはーー」
山肌に、数え切れない程の人の姿があった。
「祈り子様だ。しかも、召喚されている・・いったい誰がーー」
ブラスカは近寄ると、青白い煙りが漂う祈り子像に掌を伸ばす。
これほど力のある召喚士なら、ベベル寺院に噂のひとつも届くだろうに。
ブラスカの胸に、影が落ちる。
「なあ、ブラスカ。そろそろ行こうぜ」
痺れを切らしたジェクトが、ブラスカを急かす。
「あぁ、そうだね。行こう」
疑問は浮かんだが、ザナルカンドへの思いが、先を急がせた。
山頂を越えると、ザナルカンド遺跡が姿を現した。
ジェクトは走り出し、切り立った崖の上から遺跡を見渡した。
「あれがーーザナルカンド」
落ちていく太陽が、徐々に街の灯火を消していくように見えた。
決して、命のある者などーーいない場所なのに。
ジェクトの後ろに、ブラスカ、アーロン、アヤが立った。
「いよいよーーだな」
緊張 興奮 喜び 不安
それぞれの想いが、飛び交う幻光虫のように交錯し震える。
「もう少し進んだら、休憩しよう。その後、祈り子様に会いに行く」
ブラスカは歩き出す。
ジェクトは、眼下に迫るザナルカンドの姿を凝視していたが、ブラスカの後を追って歩き出した。
入り口までたどり着くと、火を熾し、それを囲んで座った。
しゃべる者はなく、四人の前の焚き火の明かりと
眼前に迫った遺跡を灯す、何千何万の幻光虫の光の河が
ただただ静かに、夜の闇を照らしていた。
ブラスカが、静かに立ち上がる。
ザナルカンドを見つめる彼の背中を、三人は見上げた。
「行こう」
一歩踏み出したブラスカに、三人は立ち上がり、後に続いた。
誰も見送る者などいない、最後の道行きを
ひとりの老人が密かに見送っていることも知らずに。
終
