37話 過去への旅 彷徨
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ガガゼト山の山門を歩きながら、ブラスカは白い息を吐き出した。
「アヤ、寒くないかい?」
「うん、寒くないよ」
防寒着を着込んだアヤは、ほっぺたを赤くしていた。
ブラスカは、それを見て微笑んだ。
「アーロンはーー」
振り返ったブラスカは、軽くため息をつく。
ナギ平原の旅行公司を出てから、アーロンは何を話し掛けても上の空だった。
「ほっとけよ、ブラスカ」
ジェクトが肩を叩いた。
四人は、ガガゼトの聖なる山を見上げる。
「この山を越えればーーだな」
「あぁ、もう少しだ」
雪深い山道を登り、山頂を目指す。
ガガゼト山は険しく、命を落とす者も多い。
魔物も、桁違いに強かった。
行道には、主を失った剣が、幾重にも突き刺さっている場所がいくつかある。
目標半ばに、命を失った者の墓標。
その導(しるべ)の場所には洞窟があり、夜はそこで休んだ。
アーロンは、入り口で外を警戒していた。
ブラスカは疲れたのか、奥で横になっている。
固形燃料の不安定な炎だけが、ジェクトの居場所を教えてくれた。
その炎と、湧き上がる湯気で暖を取りながら、ジェクトはアヤに話し掛ける。
「なあ、アヤ」
「ん?何、ジェクト?」
「ナギ節になったらーーアーロンと、結婚しろよ」
「え・・」
弾かれたように、ジェクトの顔を見た。
驚いたアヤの瞳に、穏やかな笑みのジェクトが映る。
まるで、父親のような
「でも・・」
ブラスカを失ったアーロンが、そんな気になるだろうか。
「アヤ、望んでいいんだぜ。幸せってヤツをよ」
アヤは俯いた。
幸せーーなりたいな アーロンと ふたりで
魔物も シンもいない
ただ 静かに暮らすだけの 平穏な毎日
でも、アーロンの頭の中は、ブラスカのことで一杯で
私が、入る隙間もないくらいに。
ブラスカは、父親みたいな存在だと言っていた。
家族の絆ーーなのかな。
アーロンとブラスカの間にある絆に、私は入れない。
私・・ブラスカに妬いてる?
「アヤ、まだ起きていたのか?」
「あ、うん。もう寝るよ」
アーロンに言われ、アヤは慌てて寝袋に入る。
彼は、アヤに背を向けて座った。
アヤが眠った頃を見計らって、ジェクトが口を開いた。
「アーロン、気持ちはわかるけどよ・・アヤちゃんのことも気づかってやれよ」
「ーーお前には、関係ない」
ガキーー
ジェクトは苦笑いした
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