37話 過去への旅 彷徨
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結局、幻光河のほとりにつくまで、ジェクトは酒瓶を離さなかった。
酒で濁った瞳に、二度めの幻光花はどう映ったのだろう。
ジェクトは酒を飲む時以外、口を開かなかった。
シパーフ乗り場の入り口に着いた頃は、迎え酒どころか、すっかり酔いが廻っている有り様だった。
「ジェクト・・大丈夫?」
「あぁ、酔いが廻っていい感じだ」
酒の力を借りた歪んだ笑みに、アヤも気づいた。
不安? 違う 怖いんだ
魔物なんか、簡単に倒せるのに。
怖くて 震えてる
ーーザナルカンドには もう戻れないかもしれないーー
淋しくて 泣いてる
ーーアイツとガキに 逢いてえーー
ジェクトの心が
だから、ブラスカもアーロンも、寺院の中でお酒を飲んだジェクトを責めないんだ。
私が、ブリッツの話をしたからーー思い出したのかな。
入り口で待っていると、様子を見に行っていたアーロンが戻って来る。
「あと、1時間程でシパーフが到着します。逸れまで、休んで下さい。ブラスカ様」
「あぁ、そうしよう」
「ジェクトはーー」
姿を探すと、屋根付きのベンチの様子に、アーロンは眉を寄せた。
「全くーーこんな時でなければ、一発殴るところだ」
ベンチでは、アヤの膝枕でジェクトが気持ち良さそうに眠っていた。
「気持ち良さそうだね。アヤ、今度私にも頼むよ」
「は~い」
「ブラスカ様!」
慌てるアーロンをよそに、アヤは笑顔で返事をした。
小一時間して、シパーフが対側から到着した。
寝ていたジェクトを無理やり起こし、乗り場に向かった。
「ジェクト、しっかり歩け」
「あぁ、わかってるよ・・」
アーロンに支えられて、ジェクトは歩いていた。
彼の叱咤に、ジェクトは生返事を返す。
巨大なシパーフの背に乗るため、設置されているゴンドラに近づいた。
初めてシパーフを見て大騒ぎしたジェクトも、今日は大人しい。
ブラスカが最初に乗り、アヤの手を引いた。
次にアーロンが乗り込み、ジェクト引き上げようとした。
「ジェクト、掴まれ」
ジェクトは差し出された手を見ずに、シパーフを濁った目で見上げている。
「どうした?ジェクト。早くーー」
「魔物め、でやがったな!」
「おいっ、ジェクト!?」
アーロンの制止を振り切って、ジェクトはシパーフに向かっていった。
「てめえっ!消え失せろ!!」
おとなしく立っているシパーフの、スネの部分目掛けてジェクトは大剣を横に振った。
「だあああああぁっ!!」
怒号と共に足を斬られ、シパーフが暴れ出した。
「お客さん、何するの~」
「落ち着くだ~よ~」
運行を任されているハイペロ族が、シパーフを押さえようとした。
だが、シパーフは幻光河の流れに逆らえる、巨大な体躯の動物である。
子供のように非力なハイペロ族が何十人いようと無理だ。
「逃げるだ~よ~」
その場にいた全員が、避難する。
そしてそれは、アーロンたちも同じだ。
三人は、尚もシパーフに向かっていこうとするジェクトを引きずるように走った。
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