36話 過去への旅 邂逅
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寺院の中で働く事に慣れてきたけど、知らない事もまだまだ多かった。
それをアーロンに尋ねても、口を濁してあまり話してくれない。
特に、アーロンと初めて逢った場所には、絶対行くなと言われた。
言われなくても、あんな怖い所、二度と行かないけど。
小雨の降り出した、少し寒い日だった。
街へ出掛けた私たちは、急に降り出した雨に、一本の傘に納まって戻って来た。
相も変わらず、弾まない会話。
でも、寡黙な男の人は嫌いじゃない。寧ろ、お喋りな人よりずっと好き。
ブラスカが気に入っている人だし、助けてもらったこともあって、悪い人じゃないのは分かってた。
だけどーー
色々思い悩んだが、今度会った時に、アーロンにさよならを言おうと決めた。
「すまない。急用で中まで送っていけない」
「いえ、いいんです。あの、アーロンさんーー」
逢うのをやめたい
そう言いかけて、アーロンの傘を持っていない右腕が、雨に濡れていることに気づいた。
「濡れてる・・」
思わず触れたアーロンの腕は、雨に濡れて酷く冷えていた。
鍛え上げられた、逞しい筋肉。
でも、堅そうに見えたその腕は
とてもしなやかで、触れた掌が心地良かった。
視線を感じて見上げれば、不安気な瞳が私を見ていた。
母親に手を離されそうな 子どもみたいな瞳だった
この人は とても不器用で 淋しいんだ
その瞳から、感じた。
アーロンの淋しさから目を逸らせずにいると、冷えた掌が私の頬に添えられる。
不思議と、嫌じゃなかった。
さっきまで沈んでいた気持ちが、嘘のように掻き消えた。
拒まない私に、躊躇いがちにアーロンは顔を寄せて来る。
私は目を閉じた。
そっと触れた、冷えた唇
初めて触れた唇の柔らかさに 目眩がした
多分その時 アーロンを好きになった
.
