36話 過去への旅 邂逅
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「ア、アーロンさんーー」
「何ってーーアルベド族が寺院に」
二人は私を押さえつけたまま、口籠もった。
アーロンは、声も出せずに震えている私の瞳を覗き込んだ。
「その娘は、アルベド族ではない」
「でもアーロンさん、そいつはブラスカの親類ですよ。アルベド族と結婚した」
アーロンは、私の頭上にある二人の顔をじろりと見る。
「呆れたな。理由はそれだけか?じゃあ説明してやる。
そいつには、アルベド族の特徴がない。だからアルベド族じゃない」
「特徴って」
「自分で調べろ。お前達、務めは終わったのだろう。さっさと帰れ」
アーロンに睨みつけられた二人の僧兵は、やっと腕を離した。
「は、はい!」
二人が走り去ると、私は涙を浮かべてしゃがみ込んだ。
アーロンは見下ろすだけで、手すら差し伸べてくれない。
「あんたが、ブラスカ様の言っていた娘かーー」
「え?ブラスカを知ってるの?」
それには答えずに、冷めた眼で見下ろし続けている。
「アルベド族と言われたくらいで、動揺するな。堂々としていろ」
「で、でも」
絡んで来た二人の僧兵よりも、遥かに威圧的なアーロンの態度に萎縮した。
「何かあれば、逸れを云われるのはブラスカ様だ。迷惑を掛けるな、いいな」
何も言えずに怯えている様子を見ても、アーロンは態度を変えなかった。
「お~い、アーロン」
アーロンの後ろから、もう一人僧兵が歩いてくる。
座り込んでいる私を見つけると、驚いて走って来た。
「おいおい、なに女の子を泣かしているんだ」
アーロンは、眉間に皺を寄せた。
「大丈夫かい?」
人懐っこい笑顔を向けられ、ホッとした。
「キノック、そいつを連れていってくれ。迷ったのだろう」
「そりゃあ構わないがーー立てるかい?」
アーロンと私の顔を交互に見ていたキノックは、手を差し出てくれた。
私は頷いて、その手につかまる。
アーロンはそれを見ると、何も言わずに奥へ歩き出した。
怯えた目で、アーロンの広い背中を見送っていると
「怖かったかい?あいつ」
「えっ?」
慌てて、キノックへ視線を戻した。
私の顔を見てやれやれと、ため息混じりに笑う。
「ぶっきらぼうだが、悪い奴じゃないんだ。
怖がらせたのなら、許してやってくれ」
キノックの言葉に、助けられた事を思い出し、恐縮する。
「いいえ、私の方こそ、助けていただいたのに・・お礼も言わずにーー」
「そんなこと、気にする奴じゃないさ。さぁ、行こう。ここから先は、何人たりと立入厳禁なんだよ」
「あ、すいません・・」
キノックが歩き出すと、私も後についた。
これが、アーロンとの出逢いだった。
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