36話 過去への旅 邂逅
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【紫闇の少女】
私の住んでいた島は、ほんとに小さな島だった。
人口も、寺院も、スピラで一番小さいと思う。
僧官も2、3人しかおらず、召喚士が出たこともなかった。
でも、シンに襲われたのはずいぶん前で、平和な島だった。
そんな環境だったからだろうか、正直、私は教えをそれ程ありがたいと思わなかった。
でも他の土地から移民した両親は、シンの恐怖を体験していた。
だから、シンに一度も襲われた事のないこの島でも、教えを盲信していた。
そのせいか、ブラスカの遠い親戚にあたる私の父は、血縁者がベベル寺院の僧官であることが、唯一の自慢だった。
ブラスカが、アルベド族と結婚するまではーー
結婚することにした。
ささやかだが式を挙げたいので、ベベルへお越し願いたい。
そんな手紙が、父の元に届いた。
父は、相手がアルベドとわかり激昂したが、私は行きたかった。
ベベルは大きな街だから、楽しい事も沢山あると思っていた。
ここは、平和だったけれどーー退屈だった。
暫くして、平和な島の沖に、シンが現れた。
海に漁へ出ていた両親はシンに襲われ、遺体すら残らなかった。
両親が死んだ後、そのまま島に残ろうと思えば、残れた。
でも、ベベル寺院で訃報を聞いたブラスカが、自分と暮らさないかと便りをくれた。
島の退屈な暮らしに飽き飽きしていた私は、ふたつ返事で飛びついた。
ベベルを初めて訪れた時ーー
グレート・ブリッジの長さに驚き
赤を基調にした色鮮やかな街に目を見張り
寺院の大きさに声を失った。
寺院の前で街を見下ろした時、シンの恐怖とは裏腹の煌びやかな街並みに、ため息が出た。
「こんな大きな街が、シンの被害に遭わずにいるなんて・・・
やっぱり、教えのおかげなのかな」
そう呟いた。
寺院の中の居住地に、ブラスカは妻のシエラと娘のユウナの3人で住んでいた。
アルベド族と結婚した彼は、寺院の中では軽視されていて。
寺院では、それをひしひしと感じた。
一人娘のユウナは、友達が誰もいなくて。
私が同居することを、とても喜んでくれた。
でもその年、悲劇がおこった。
シエラさんが乗っていた船がシンに襲われ、亡くなってしまった。
ブラスカは、シエラさんの葬儀が済むと、すぐに従召喚士になった。
「いずれは、召喚士になって、シンを倒すよ」
強い決意を漂わせて、ブラスカは語った。
「寺院はブラスカに冷たいよ。それでも、命を掛けるの?」
そう言うと、ブラスカは笑った。
「寺院の為なんかじゃないさ。スピラに生きる、全ての人の為に倒すんだよ。
私はねーー悲しみを消したいんだ」
静かに語るブラスカを、私はただ見つめていた。
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