36話 過去への旅 邂逅
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「ん・・」
唇を貪りながら、乱暴に衣服を剥いでいく。
脱がし終わると、ベッドに押し倒し、夢中で肌を撫で廻した。
こうして、アニスを抱くようになってどの位になるだろう。
気が向いた時に訪れ、ひとしきり抱いた後、金を置いて出て行く。
アニスは何も訊かないし、俺も尋ねない。
余計な煩わしさがなかった。
其れで、続いていたのかもしれない。
久し振りに、彼女の元を訪れた時だった。
身体を重ねた後、ベッドの上で腹這いのまま、アニスは煙草に火を点けた。
「ねえ・・」
ことが終わった後の、気だるい口調。
「あたし、故郷に帰ることにしたの」
「・・・」
「やだ、驚いた顔してる」
アニスは口元をほころばせる。
「あたしも、もういい年だしね。帰って来いって、両親が。
知らないんだーーこんな商売してるの」
声を掛けた時は、薄暗くて気づかなかったが。
アニスは俺より、ひと回り近く上だろう。
もう、顔も覚えていない。
覚えているのは、俺の掌が揉みしだいた乳房の柔らかさと、熟れた匂い。
うっすらと刻まれた、目尻の皺
其れだけだった。
アニスが色街から姿を消した後、俺は足を運ばなくなった。
大した理由はない。面倒になっただけだ。
彼女の存在を忘れ掛けていた頃、要人警護に行っていた部隊が、シンに遭遇したと騒ぎになった。
「聞いたか、アーロン」
「あぁ、被害はどれくらいだ?」
「いや、遭遇したのは海の上で、被害はないらしい。
だが、他の船はやられたらしい。そのままシンは、ビサイド島へ向かったそうだ」
「ビサイド島?」
「故郷?南のちっぽけな島よ。ビサイド島っていうの」
その後、ベベル寺院に被害報告が届いた。
死亡者の名前の中に、アニスの名を見つけた。
もう少し、大事にしてやればよかったーー
僅かな悔いが、胸をよぎる。
朧気に、彼女の輪郭を思い出し掛けた時、すぐ下にある名に、目を見張った。
険しい顔で部屋を出ようとすると、キノックが声を掛ける。
「アーロン、どうした?知り合いでもいたのか?」
キノックの問いに答えずに、俺はブラスカの元へ急いだ。
アニスの下には、『シエラ』の文字が綴られていた。
最愛の伴侶をシンによって奪われ
ブラスカが召喚士になる事を、俺はーー止められなかった。
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