36話 過去への旅 邂逅
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ブラスカの結婚を機に、俺は寺院の宿舎を出て、ベベルの街外れに家を借りた。
小さな一軒家だったが、遠征で長期に渡って家を空けるか、寝に帰るだけの生活には、充分だった。
その家に住み始めると、キノックがよく訪ねて来た。
キノックは、寺院の宿舎で同室だった男で
人付き合いの悪い俺に、唯一出来た、友だった。
「なあ、アーロン。出掛けないか?」
「あぁ、構わんがーーどこへだ?」
遠征から戻り、まとまった休暇を貰った。
ここぞとばかりに、キノックが入り浸っている。
息苦しい寺院と違い、ハネを伸ばせるのだろう。
ブラスカの所へは顔を見せていたし、俺はふたつ返事で了承した。
街中へ向かう道すがら、闇を行き交う、幾つもの光を見上げる。
ベベルの街は、もう随分とシンの被害がない。
空を照らし、侵入を阻むサーチライト
火薬を用いる機械兵
空を舞う 聖獣
何故、聖獣エフレイユがいるのか?
疑問に思ったことがある。
シンを倒せずとも、追い払うだけなら、機械兵で充分だろう。
逸れを口にすると、キノックが笑いながら言った。
「機械を使っていることを、ごまかす為だろ?
エボンの総本山のベベルに、最新の機械の武器があるなんて知れたら、
スピラ中の人間が教えを棄てるぜ。
グアド族みたいに、エボンの教えを信じていない民族は、まだまだ多いからな」
僧兵になって3年。
キノックには、欲と云うものがないのか。
出世には、まるで興味がないようだった。
「僧兵になった理由?食いっぱぐれる心配がないからさ」
その理由に、笑った。
キノックについて行くと、そこは色街だった。
どんなに寺院が厳粛であろうと、こういった場所は必ず出来る。
わずかな明かりしかない道添いに、下品な店が並ぶ。
化粧と香水の濃い女が、
こちらを見ながら、路地裏で煙草の煙りをくゆらせている。
「おまえ、浮いた話を聞かないからな」
苦笑いするしかなかった。
別に、女が居なかったわけではない。ただ、長続きしなかった。
俺はいつでも、ブラスカを一番にしていたから。
「あの娘なんかどうだ?可愛いぞ」
キノックが指を指したのは、黒髪の胸の豊かな女だった。
「あんた、名前は?」
「アニスよ」
ーー娼婦なら、後腐れなくていいか
.
