36話 過去への旅 邂逅
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【朱を纏う少年】
幼い頃、両親を亡くし、頼れる者もなくひとり街に放り出された。
このスピラでは、そんな子どもは珍しくなかった。
珍しくはなかったが、生きていくのは容易ではなかった。
そのような境遇の子どもたちのために、寺院は養護施設を造っていた。
目的は、シンや魔物に親を殺された、子どもたちの保護及び教育。
後にわかったことだが、それは表向きで。
実際は、シンの殺戮による寺院離れや、反エボンを増やさないための予防策の一環だった。
しかし、その施設のおかげで、野垂れ死にをしなくてすんだのは確かだった。
施設の中では一般的な教育と、武術の訓練を受けられた。
ようは、教えを骨の随まで染み込ませ、僧官としてスピラ各地の寺院に派遣する為の予備施設だ。
そして、僧兵として使える者を篩いに掛ける為。
その中で俺は、常に成績優秀だった。
特に武術では、俺の右に出る者はいなかった。
だから、僧官を目指すよりは、僧兵を目指そうと思っていた。
だが教鞭を奮う僧官とは折り合いが悪く、人付き合いも苦手な為、孤立することも多くあった。
別に、馴れ合いは好きではないし、独りの方が気は楽だったので、苦ではなかった。
寧ろ、その方が性に合っていたかもしれない。
そんな中、俺に興味を示す僧官がいた。
それがブラスカだった。
彼は寺院の中で、異端者だった。
教えに背く機械を、日常的に使いこなすアルベド族との交流に力を入れていた。
教えは、スピラに生きる全ての者を、救いの対象としている。
だが、ひと以外の亜人種をはじめ、他の民族を軽視する傾向があり
アルベドを差別することは、暗黙の了解となっていた。
また、グアド族のように、エボンの教えを見下す種族がいたことも確かだ。
しかし、シンを倒せるのは《召喚士》の《究極召喚》しかない。
その事実が、寺院の力を圧倒的なものにしていた。
ブラスカは、何かにつけて、俺に話し掛けてきた。
訓練も何もない日は、自室に招かれ、一日中取り留めのない話をして過ごした。
そんな日々を繰り返しているうち、ブラスカが俺の心の奥底で、僧官という存在から、兄のような父のようなーーそんな存在になっていった。
それをはっきり自覚した出来事があった。
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