32話 戦場
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ビランとエンケに見送られ、また、雪道を歩き出した。
進む程に、深くなる雪。
慣れない山道に、焦りと疲労ばかりがつのり、遅々として進まない。
何度も休憩し、ガガゼト山の初日が終わろうとしていた。
「そろそろ洞穴がある筈だ。ユウナ、其処で今夜は休もう」
初めての雪山に、ユウナも疲れを隠す事が出来ないでいた。
アーロンの言葉に、ホッと頷いた。
「・・はい」
「此処だ」
剣やユウナが使っているようなロッドが、雪に幾本も刺さっている場所で、アーロンは足を止めた。
横を見ると、狭い穴があいている。
「入り口は狭いけど、中は広いわ。今夜は、ここで休みましょう」
アヤが先に入ると、皆は後に続いた。
アーロンは辺りを警戒しつつ、最後に入った。
携帯用の燃料に火を点けて、湯を沸かす。
持ち運びが楽な乾燥野菜で、スープを作った。
酷寒の地では、何よりのご馳走だ。
スープと固形食で空腹を満たすと、一気に睡魔が襲って来る。
魔物の奇襲に備え、交代で寝ずの番をすることになった。
最初はアヤから。それ意外の者は、眠った。
アヤは、燃える炎を見ていた。
雪に覆われた、聖なるガガゼト。
それはまるで、白い地獄のようだとアヤは思った。
シンを倒す為の、試練の旅。
心と身体を鍛えて、究極召喚に耐える。
「ふっーー」
思わず 笑った。
そんなもの、必要ないじゃない。
あそこにたどり着きさえすればーー
アヤは膝を抱えて、顔を伏せた。
ガガゼト山の洞窟で、夜を明かしていた。
アーロンは、入り口で外を警戒していた。
ブラスカは疲れたのか、奥で横になっている。
固形燃料の不安定な炎だけが、ジェクトの居場所を教えてくれた。
その炎と、湧き上がる湯気で暖を取りながら、ジェクトはアヤに話し掛ける。
「なあ、アヤ」
「ん?何、ジェクト?」
「ナギ節になったらーーアーロンと、結婚しろよ」
「え・・」
弾かれたように、ジェクトの顔を見た。
驚いたアヤの瞳に、穏やかな笑みのジェクトが映る。まるで、父親のような
「でも・・」
ブラスカを失ったアーロンが、そんな気になるだろうか。
「アヤ、望んでいいんだぜ。幸せってヤツをよ」
アヤは俯いた。
幸せ なりたいな アーロンとふたりで
魔物も シンもいない
ただ 静かに暮らすだけの 平穏な毎日
「アヤ・・」
肩を揺する、大きな掌。
「んーー」
顔を上げると、アーロンと目があった。
「ごめん、眠ってた・・」
眠っている皆を起こさないように、声を潜める。
「時間だ。休め」
そう言うと、アーロンは火の側に腰を降ろす。
「うん、後はお願いします」
「あぁーー」
アーロンの肩に手を置き、触れるだけの口づけを、密かに交わした。
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