32話 戦場
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ビランが立ち上がろうとすると、キマリが手を差し出した。
その手を握り、ビランは言った。
「強くなったな、キマリ。ビランは嬉しいぞ」
ビランは立ち上がると、大きく息を吸い、ガガゼト山に向かって叫ぶ。
「霊峰ガガゼトよ!ビランを負かした強者の、栄えある名前を伝えよう!
その名は、キマリ・ロンゾなり!」
ビランの声が、ガガゼト山に響き渡り、降り積もる雪に融けて云った。
「御山は、キマリの強さを知った。
キマリを受け入れるだろう」
負けを認めたビランを見て、エンケも穏やかに言った。
ビランはユウナに近づいた。
先程までとは違い、物静かな態度になる。
「召喚士、寺院からの追っ手は、我らロンゾが食い止める」
「本当ですか!?」
その言葉に、驚きながらも喜びを表した。
「昔、キマリのツノを折った償いだ。キマリの誇りを、俺たちも護ろう」
エンケもユウナの前に立ち、力を貸す事を宣言する。
「召喚士の後ろから来る敵は、我らが倒す」
「ユウナの前に立つ敵は、キマリが倒す」
ビランは、キマリの言葉に頷く。
「お前ほど、恵まれた召喚士はいない。だが、御山は、たとえ誰であろうと容赦はしない。気をつけて行け」
幻光河での忠告も、ビランとエンケなりの優しさだったのだろう。
かなり、誤解を招く態度だったが。
「ありがとうございます」
ユウナは、深々と頭を下げた。
キマリは満足気に、それを見守っている。
十年に渡る確執も、春の雪溶けのように、キマリの中から消えてなくなった。
二人に別れを告げ、また山を登りはじめたユウナたちの耳に、低い歌声が聞こえた。
振り返ると、ロンゾ族が二人の周りに集まっていた。
全員で、祈りの唄を歌っている。
ユウナの旅の 無事を祈るように。
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