32話 戦場
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「寺院は教えを歪め、スピラを裏切っています」
白い息を吐きながら、ユウナはケルク・ロンゾにきっぱりと言い放つ。
「裏で小細工ばっか、しやがってよ!」
「そうだ!そうだ!」
ワッカが憤慨すると、後ろでティーダとリュックが声を揃える。
「未練はありません」
この覚悟の前に、恐いものなど 有りはしない
「言わせておけば!」
ビランが、怒気を露わにユウナの前に立つ。
いきり立つビランの前に、キマリが立ちはだかった。
自分よりも頭ひとつ大きいビランと、正面から睨み合う。
ビランの長く雄々しいツノが、キマリを嘲る。
しかし、キマリは一歩も引かない。
「召喚士と、ガードともあろう者がーー」
ケルクは、半ば呆れ、嘆かわしいと言わんばかりだ。
そのケルクに、アヤは疑問をぶつける。
「お言葉ですが、ケルク・ロンゾ様。貴方は何故、寺院を離れたのです?
貴方も寺院のやり方に、疑問をもたれたからではないのですか!?」
「それでも山を護るのは、一族の誇りの為か?」
アーロンは、毅然と立つユウナを一瞥する。
「ユウナもーー同じだ」
間、髪(はつ)を入れずに入ったアーロンの援護射撃に、ケルクは言葉に詰まる。
「む・・」
ビランが、キマリと睨み合ったまま叫ぶ。
「ケルク大老!こいつら、ビランが八つ裂きにしてくれよう!」
ビランの叫びに、エンケが呼応する。
「ひとりも逃がさん!」
「逃げません。戦って、旅を続けます」
ビランとエンケの怒りが増す程、ユウナは冷静になっていく。
「反逆者の汚名を着せられて尚、シンに挑むというのか。
寺院に背き、民に憎まれても、旅を続けるというのか!
其処までして、戦うのは何故か!?」
ケルクは、ユウナを見つめた。
その言葉に、ユウナは目元を緩めて、たおやかな笑みを浮かべる。
「ーースピラが好きです」
さざ波ひとつ立たない湖の水面のように、ユウナは静かに語る。
「ナギ節を待つ人々に、私が出来るたったひとつの贈り物ーーそれは、シンを倒すこと。それだけです」
ユウナが発した言霊を、ケルクはまだ信じられないと、ゆるゆると首を振った。
「己を犠牲にしてもーーか」
究極召喚の末路を思い、ケルクは目を閉じた。
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