31話 ナギ平原の夜
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翌日、ザナルカンドに向かうべく、旅行公司を後にした。
風もなく空は晴れ渡り、少し冷たい空気が心地良かった。
出発前、マカラーニャの森の方角から、近づいてくる人物があった。
「ズーク先生!」
ルールーが驚きの声を上げる。
「久しぶりだな」
低く、落ち着いた声。
僧官が纏う衣服を着ているが、追っ手のようには見えない。
ズークは、ユウナを見つめた。
「ーーユウナさんだね?とても、キノック老師を殺した犯人には見えないね」
「何ですか、そりゃ!?」
ズークの言葉に、ワッカは怒りと驚きを露わにする。
「誰がそんなことを」
顔を曇らせるユウナに、ズークはベベルの実情を話す。
「昨日、マイカ総老師直々の指令が出た。
召喚士ユウナとそのガードが、キノック老師を暗殺して逃亡。発見次第、誅殺せよーー処刑宣告だ」
ユウナは、言葉を失った。
「他に、ベベルの状況は?」
アーロンはズークに近づいた。
少し離れて立っているアヤに気づき、ズークは微かに微笑む。
「表向きは静かだが、水面下ではごたついている。
キノック老師が亡くなった上に、ケルク・ロンゾ老師が辞任した」
「好都合だな。エボンが混乱すれば、それだけ動き易い」
「だが、用心したまえ。今や、君たちはエボンの敵だ。寺院にも、近づかない方が賢明だね」
ズークの進言に、ユウナは頭を下げる。
「ご忠告、有難うございます」
「先生、それだけを伝える為にここまで?」
「君たちがガードしている召喚士が、どんな人なのかーーいささか興味があったのでね」
「ズークさん」
アヤは彼に近づくと、心配気な顔をする。
「やあ、アヤ」
「大丈夫ですか?情報を流して」
寺院が知れば、極刑も有り得る。
アヤの心配をよそに、ズークは明るく言った。
「大丈夫、上手くやるさ。ルールー、今度は最後まで行けるといいね。何よりも、君自身の為に」
「・・はい、先生」
言葉少なに頷くルールーに、ズークは別れの挨拶をする。
「では、私はこれで。無事を祈るよ」
再度頭を下げるユウナに対し、ルールーはエボンの祈りを返した。
自分たちに罪をなすりつけた寺院の教えを、無意識にしてしまうのは、長年の習慣からだろうか。
「今の、誰?」
ティーダの疑問に、ズークを見送りながら、ルールーは答える。
「半年前まで、召喚士だった人。私とワッカは、先生のガードだった」
「短い旅だったけどな」
ワッカは苦い顔をする。
「先生は、途中で旅をやめたのよ。この平原でね。
今は、ベベル寺院で僧官を務めているわ。
私のガードの旅は、これが三度目。先生は二度めの旅。初めての時はーー」
辛そうに目を伏せた。
そして、彼方に聳えるガガゼト山を見る。
「二回とも、この平原で挫折。私、ここを越えたことないのよ」
ルールーは、少し淋しそうに笑った。
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