31話 ナギ平原の夜
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無音の闇の中で、アーロンは目を開けた。
何も見えなかった視界が、徐々に朧気なシルエットを描き出す。
アーロンは首を動かし、部屋を見渡した。
アヤはーー眠っているのか 影は動かない。
皆を起こさないように、ゆっくり立ち上がった。
旅行公司の外へ出る。
ガガゼト山が近いからだろうか、冷たい空気に夜空は澄み切って、星が美しい。
アーロンは、星明かりの中で目をこらす。
「ーーキマリか?」
後ろから聞こえた声に、キマリは振り返る。
「どうした?アーロン」
「目がさえてな。ーー此処は、己の愚かさばかりが、思い返されてならない」
「おまえもアヤも、自分を責めてばかりだな」
「・・・」
そうかもしれないと、アーロンは嘲笑う。
再会し、お互いの気持ちを確認した今もーー罪の意識は消えない。
特に、この場所では。
「キマリは、アーロンと出逢った時の事を、思い出していた。
此処は、良くも悪くも、思い出の地ーーなのだな」
「そうだな・・」
ふと、昔、頼んだ事の礼を言っていなかったと、言葉を続ける。
「世話に、なったな」
「まだ、礼を言うのは早い。それにーー」
アーロンが、訝し気にキマリを見る。キマリは身体ごとこちらを向いた。
「ユウナの元に留まったのは、キマリの意志。
礼を言わなければならないのは、キマリの方だ。
誇りを喪ったキマリに、新たな誇りを与えてくれた。ユウナを護る事は、キマリの誇り」
真っ直ぐに自分を見据える、金色の眼差し。
選択の余地のない状況だったとはいえ、この男に託したのは、決して間違いではなかった。
アーロンは、俯き加減に微笑んだ。
「ーーそうか」
「アーロン」
少し改まって名を呼んだ。
「何故あの時、アヤの事も、キマリに言わなかった」
キマリは言葉を切ると、返事を待った。アーロンは、重い口を開く。
「俺は、大層なご託を並べて旅立っておきながら、結局は何も出来なかった。
ブラスカの死も、覚悟していた筈だった。
だが、それを目の当たりにした時、絶望感に苛まれた。
俺の事など、忘れた方がアヤのためにいいのだと思った。だから、あの時ーー」
アーロンは、空を仰ぎ見る。
「いや、違うな。本当は、アヤに拒絶されるのが怖かった。あんな有り様の時にーー」
「あの時のおまえの涙は、そういう意味だったのだな」
「あぁ・・とんだ、痴れ者だろう」
キマリは、しばしアーロンを見つめた。
「アーロン。どんな覚悟にも、絶対はない。いつでも揺れ動き、結果を恐れる。
しかし、それ故に、そうならないよう強く有りたいと願う。
ーー10年たった今は、どうなのだ?」
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