31話 ナギ平原の夜
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「お前、何で俺と付き合う気になったんだ?」
俺に怯えていた、紫の瞳。
出逢いは最悪だった。
「何?急に」
旅行公司の炊事場で、リュックとアヤは食事の用意をしていた。
従業員がいないので、ここに滞在中は、自分たちで何もかもしなければならない。
雷平原で会った時に、いずれ此処にたどり着くと思ったのだろう。
相変わらず、よく気の回る男だ。
保存のきく野菜や塩漬けの肉、缶詰めが大量に用意してあった。
酒も、何本か置いてある。
何より、煎り立ての珈琲豆が嬉しかった。
しかし、この人数だ。此処を後にする頃には、粗方なくなっているだろう。
危なげな手つきで塩漬けの肉を切りながら、リュックはアヤにアーロンと付き合い始めた理由を訊ねた。
「怖いし、無口だし、無愛想だし。どこが良かったの?顔がよかったから?」
リュックがおどけて言うと、鍋をかき混ぜていたアヤは、腹を抱えて笑い出した。
「あはははは!全然!顔なんか、見る余裕無かった!初めて逢った時、ほんと怖かったんだから!だけど・・・手がね」
「ーー手?」
「うん。おっきくて、ゴツゴツしてて、剣だこや切り傷だらけでね。
言葉とは裏腹に、優しかった。だからかな」
「ふ~ん」
今のアーロンか、それとも昔のアーロンを思ってか。
アヤは、優しい笑みを浮かべた。
手元に視線を戻したリュックに、アヤはポツリと呟いた。
「リュックーーごめんね」
「え?何か言った?」
「ーーううん、何でもないの。あ、切ったお肉、頂戴」
「うん」
食事が終わると、リンの心尽くしの酒を、キマリとワッカとアーロンが少しだけ楽しんだ。
その後は、皆で部屋に夜具を敷いた。
自然に、真ん中から男女に分かれる。
布団の上に座ったユウナが、何か言いた気にアヤを見上げる。
「何?」
訊ねても、子どもが玩具をねだるように、じっと顔を見るだけだ。
ユウナの気持ちを察したアヤは、仕方ないと、眉を下げて笑った。
「お休み、ユウナ」
そう言うと、ユウナの頬に唇を寄せる。
軽く音をたてて唇が離れると、ユウナが嬉しそうに、ふにゃりと笑った。
「お休みなさい」
笑い顔のまま布団に潜り込むユウナを見て、リュックが口を尖らせる。
「いいな~。アヤ~、あたしにも~」
「はいはい」
お休みと、唇がリュックの頬に軽く触れる。
それを見ていたルールーが
「大きな子どもね」
と、微笑んだ。
全員が布団に入ると、キマリが灯りを消した。
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