30話 聖なる泉
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辺りいち面に降り注ぐ朝陽に、浅い眠りについていたキマリが、ゆっくり目を開けた。
朝陽の中でも、月光の中でも、ひらひらと舞い上がる幻光虫の神秘さは、変わらないのだなーー
そんなことを思いながら、キマリは眠っているユウナ達に、一瞥をくれた。
ユウナの隣りで、だらしなく口を開けて眠るティーダを見て、軽くため息をつく。
まだ、目覚めそうもない彼らをそのままにし、ゆっくりアーロンに近づいた。
陽に照らされる街道を見渡しながら、声を掛ける。
「器用だな」
キマリは、アーロンにもたれかかって、立ったまま眠るアヤを見つめた。
苦笑するアーロンに、視線を移すと
「眠らなくて、大丈夫か?」
「あぁーーこんな身体だからな」
アーロンは、静かに答える。
「この先は、ナギ平原だな」
どこか懐かし気に呟くキマリに、アーロンは、苦い記憶を、嫌でも蘇らせる。
「・・あぁ」
「う・・ん」
二人の話し声に、アーロンの腕にくるまれているアヤが、目を覚ました。
「ーー!」
キマリが傍にいることに気づき、慌ててアーロンの腕から離れてようとした。
それを、意地悪く口の端を上げ、アーロンは拒んだ。
「どうした?アヤ」
わざとらしく訊く彼に、アヤは顔を赤くする。
「だって、キマリの前よ」
「だから?」
「だからってーーもうっ、アーロン!」
アーロンは、声を殺して笑っている。
「アヤ、キマリは気にしない」
「キマリが気にしなくても、私が気にするの!」
益々赤くなるアヤの頬に、キマリは目を細めた。
そのやりとりが森の静寂を破り、皆の眠りを妨げた。
「な・・にーー?」
ユウナが何事かと、目をこすりながら起き上がると、次々に皆が目を覚ます。
枝の上で、器用に眠っていたリュックが、目ざとく寄り添っている二人の姿を見つける。
「あ~!!見てよ、あれ~!!」
頬を膨らませてリュックが指差せば、視線が集まる。
「あら、いいわね」
「朝っぱらから見せつけてくれるぜ、アーロンさん」
ルールーが微笑むと、ワッカが大袈裟な仕草で、額に手を当てた。
ユウナは羨ましそうに呟く。
「いいなあ、仲良しで」
「やってろよ、エロオヤジーー」
ティーダは腕を組むと、やっかみを込めて、忌々しく呟いた。
「じゃあ、アーロンさんの気がすんだら、出発しま~~す!」
ユウナの高らかな宣言に、作り笑いではない心からの笑い声が、辺りに響いた。
皆の視線を集め、アヤはボヤいた。
「もう〜」
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