30話 聖なる泉
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野営地を出て、ルールーに教えられた道を歩いた。
マカラーニャの森は、静かに青白い光りを放っている。
少し歩くと、キマリが腕を組んで立っていた。
ティーダは、立ち止まった。
「キマリーーユウナは?」
キマリは黙って、道の奥を指差した。
「ありがと」
礼を言うと、その方角へ歩き出す。
「ティーダ」
後ろから呼び止めらた。
「なんスか?」
名前を呼んだまま、上から見下ろすキマリに、ティーダは不思議な顔をする。
「いや、何でもない。呼び止めて、すまなかった」
そう言うと、また腕を組み、辺りを警戒し始めた。
キマリの様子に、ティーダは微かに笑い、歩き出した。
澄んだ泉の中に、ユウナは佇んでいた。
まるで、ベベルで起こった事の、禊をしているように見えた。
夜空には三日月が揺らぎ、木々が暖かな橙色に彩られている。
月の光りを受け、幻光虫が絶え間なく白い輝きを放ち、舞っていた。
ティーダが淵に近づくと
「みんなに応援してもらって、笑って逝けると思ってたのに。がんばってたのにな」
ユウナは夜空を見上げたまま、遠い過去のことのように話し出した。
「もう、がんばるのーーやめろよ。聴いたんだ。全部」
その言葉に、ユウナは振り返る。
「全部?」
申し訳なさそうに、ティーダは頷いた。
「そっか・・知ってるんだ」
ユウナは、寂し気に笑った。
ティーダも、泉の中へ入っていく。
「ごめん。俺ーーほら、色々言っちゃたろ。早くシン倒そうとか、ザナルカンド行こうとか。
ユウナがどうなるか、知らないで、さ。やな思い、させたよなーー悪かった」
「そんなことない。楽しかった」
すぐに口をついて出た否定の言葉は、気づかいからではないーー本心。
彼と話している時だけは、独りの女の子でいられたから。
ティーダは、大きく息を吸うと、泉に身を沈めた。
泳ぐ魚を見つけるように、ユウナは目で追った。
泉から勢いよく顔を出すと、月を見上げてティーダは言った。
「あのさーー思い切って、やめちゃおう!」
ユウナは首を傾げた。
「がんばること?」
「ううん、旅」
ティーダは、泳いでユウナに近づいた。
「シンとか召喚士とか、そういうの忘れてさ。う~ん・・うん!普通っつうか、地味に暮らすのも悪くないって!」
「いいかもね。でもーーみんなびっくりするよね」
言いながら、浮かない顔をする。
そんなユウナに、ティーダは早口にまくし立てた。
「大丈夫、アヤとリュックは賛成してくれるよ。ルールーとワッカもなんとかなるし」
「キマリも、わかってくれると思う。アーロンさんはーー」
「任しとけって!俺が、話しつけるっス!」
ユウナが言い澱むと、ティーダは胸を叩く。
「ううん、自分で言うよ」
ユウナは微笑んだ。
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