28話 懐かしの場所
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「陽が落ちてきたなーーそろそろ、出発しよう」
「みんなを起こしてくるわ」
アヤが居間を出ると、アーロンは立ち上がり、扉の脇に立て掛けていた太刀を手にした。
ユウナは座ったまま、アーロンの背中に話し掛ける。
「アーロンさん」
「なんだ?」
サングラスの位置を直しながら、返事をする。
「私がシンを倒したら、アヤさんと幸せになって下さい」
思いがけないユウナの言葉に、アーロンはどう返事をすべきか迷った。
黙り込むアーロンの背中に、念を押すように重ねて言う。
「約束して下さい」
真剣な響きに、顔を少しだけ後ろに向ける。
「ーー余計な心配をするな、ユウナ」
「でも!」
その時、延びをしながらティーダが入って来る。
「さあ、行くっスか!」
居間に入るなり、ユウナの訴えかけるような瞳に、思わず立ち止まる。
「どうした、ユウナ」
後ろから入って来たキマリが、訝し気に声を掛ける。
「あーーううん、何でもないよ。キマリ。アヤさんは?」
「用意があるから、ちょっとだけ待っててくれって」
リュックが言い終わると同時に、アヤが入って来た。
「ごめんなさい、待たせて」
アヤは、今まで腰につけていたホルダーを、右足の太腿にベルトでつけていた。
腰には、カートリッジ・ポケットが沢山ついたベルトを巻き、剣を差している。
「アヤの銃って、リボルバー?」
「うん。改造したけどね。グリップとか」
リュックが興味津々と言った顔で、銃を見る。
家の扉を開け、外の様子を窺いながらアーロンが会話に割り込んできた。
「自動の方が、楽だろうに」
「おっちゃん、撃てるの!?」
アーロンの言葉に、リュックは目を見張る。ルールーやワッカも同じだった。
「なんだ、そんなに意外か?」
振り向くと、皆の顔を見渡した。
「寺院が教えを裏切っていたのは、昨日今日の話しではない。ということだ」
「千年前からだったりして」
茶化すように口にした後、流石に言い過ぎたかとティーダは首をすくめた。
が、誰も彼を咎めなかった。
「案外、そうかもしれないわね」
アヤは苦笑した。
外へ出ると、空は黄昏色を一面に描いていた。
橙色と赤の空が、ベベルの街並みを黒いシルエットで浮かび上がらせている。
その中の幾つもの明かりが、命の営みを監視するように、妙に寒々しく灯っていた。
「行くぞ」
アーロンが歩き出すと、ぞろぞろと後に続いた。
アヤは足を止め、出て来たばかりの家を振り返った。
ただ、毎日を平凡に過ごしたこの家。
ままごとのような、暮らしだった。
そんな想い出に別れを告げるように、アヤは踵を返した。
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