28話 懐かしの場所
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「ありがとう、ルチル」
「礼を言われるのは、まだ早いですよ。さあ、早く武器を」
アヤは頷いた。
「私が探してくるわ。ワッカ、手伝ってくれる?」
「俺っすか?」
意外な顔をするワッカに構わずに、アヤは武器庫へ入った。
慌てて、ワッカも後を追う。
整然と並んだライフルの奥に、乱雑に放置されている剣や刀があった。
アーロンの大太刀は、すぐに見つかった。
それを足元に置き、二人は残りの武器を探す。
ガチャガチャと音を立て、ワッカが上にある物をどかした。
「あっ、ティーダの剣があった」
ワッカが剣を見つけると、アヤは自分の銃と、リュックの鞄が転がっているのを見つけた。
それを拾い上げると、ワッカには話し掛ける。
「あのね、ワッカーー」
「あ、俺のボール!」
ワッカは自分の武器を見つけ、確かめるように指先で廻す。
回転を止めると小脇に抱え、顔だけアヤに向ける。
「なんすか?アヤさん」
背中を向けたままのアヤに、不思議な顔をした。
「私、ワッカに謝りたい事があるの」
「へ?」
益々不思議な顔になったワッカは、アーロンとティーダの剣を持ち、アヤの後ろに立った。
「別に俺、アヤさんに謝ってもらうことなんかーー」
自分から話し掛けて来て、黙り込んでしまったアヤを見つめる。
「幻光河でシパーフに乗った時ーー」
「シパーフ?」
つい大声を上げたワッカを振り返る。
驚くワッカを見上げ、アヤは続けた。
「あなたが、寺院の教えをティーダに熱弁した時。あの時 私ねーー
『アヤ、どうしたっスか?』
『気分でも悪いんですか?』
『大、丈夫ーー何でも、ないの』
私、笑ってたの。ワッカのことを。
「寺院の本当の姿を知っていた私は、教えを盲信しているあなたが、可笑しくて堪らなかった」
自分では何もせずに、寺院に頼り召喚士にすがりつく、この世界の人たちが、堪らなく嫌だった。
十年前の 私みたいで
「だから、ごめんなさい」
頭を下げるアヤの、白い項を見つめる。
十年前は、自分の方が小さかったな
ビサイド島で初めて会った時を思い出した。
見上げていたアーロンの背も追い越し、体格も自分の方が大きいだろう。
ルールーも、アヤに憧れていた。
教えを信じて疑わなかった あの頃。
「アヤさん、頭を上げて下さい。あの時の俺は、自分で考えようとしなかった。
教えに都合のいいことだけを見ていた。
何ひとつ、自分の目で確かめる事をしなかったくせに、何もかもわかった気になって。
アヤさんに笑われるの、当たり前です。俺の方こそ、すいませんでした」
ワッカの言葉に、アヤは顔を上げる。
「行きましょう。みんなが待ってます」
アヤは滲んでくる涙を、瞼を閉じて止めた。
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