28話 懐かしの場所
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【想い出と密かな覚悟】
どうしてーーとか
何でーーとか、聞けなかった。
ナギ節が、二人を引き裂いてしまったから。
二人に悲しみを与えてしまったから。
そうだーー私も。
父さんが居なくなってーー泣きたかった。
声をあげて。
私がつくるナギ節は、誰も悲しませたくない。
無理かなーー
欲張りかなーー
でもーー
「どこかに、出口がある筈だ。それを捜すしかないな」
曲がりくねった路を、壁に手を付きながら歩いているアーロンが呟く。
薄暗い中にいるせいか、随分と歩いた気がした。
何度か遭遇した魔物も、アヤの魔法と、アーロンの体術で切り抜けた。
度重なる戦闘に体力を消耗し、疲れが二人の顔に出始めた頃。
狭い路が、不意に開けた。
そこかしこに明かりが灯った、丸い広間だった。その中央に、人が立っている。
「やはり君かーーユウナ君」
イサールの姿に、ユウナは驚きを隠せなかった。
「何故ここに・・」
「飛空挺から降りて、ベベルに来たら、キノック老師に呼び出されてね。反逆者を、始末しろとの命令だ」
イサールに反逆者と呼ばれ、ユウナは俯いた。
「やる気かーー」
彼の返答に、アーロンは懐に手を入れる。
イサールとて、アルベドのホームでシーモアの命による、虐殺を目の当たりにしている。
寺院のやり方に、疑問はあった。だがーー
「寺院の命令は絶対だ。例え、ブラスカのご息女といえど、やらねばならん」
生真面目な彼は、苦し気に呻いた。
「ガードは?ふたりいたわよね」
「マローダとパッセなら、ここにはいない。汚い仕事を請け負うのは、僕だけでいい」
顔を背けて、答える。
「そうーー」
独りで来た事を訊くと、アヤは素早くイサールの腕をねじ上げた。
「な、何をする!」
苦痛に顔を歪めて、イサールはアヤを睨みつける。
「ガードを置いて来た、あなたの不始末よ。召喚させなければ、あなたを倒すことなど、容易い」
アーロンは、懐に隠し持っていた小太刀を、鞘から抜いた。
それをイサールの喉元へ突きつける。
「退け。ユウナに危害を加える気なら、俺は、お前を殺すことを躊躇しない」
召喚獣でなんとかしようなどと、甘い考えでいたイサールは、アーロンの覚悟にガックリとうなだれた。
アヤが戦意を喪失した彼の拘束を解くと、アーロンも小太刀を鞘に収めた。
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