27話 メビウスの輪
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【捕らわれの命】
「夢ーーか」
何年ぶりだろう。
あの頃の夢を見るのは
堅物だが、腕の立つ長年の友と。
どうやって口説いたのか、妹のように慕ってくるそいつの可愛い恋人。
妙に生温く、ある意味、平穏だった日々。
現在のようになるとは、予想だにしていなかった、あの頃。
キノックはベッドの上に体を起こし、窓の外に目をやった。
いつものように、空は蒼かった。
薄暗い牢の隅で、うずくまっている女の名を呼んだ。
「アヤ」
返事をするどころか、顔を上げることすらしない。
「アヤ、もう一度言う。私の申し出を受け入れろ」
反応しないアヤに、キノックは冷たく笑う。
「裁判は形だけだ。あいつらの処分は、決定している」
「殺すのねーー」
アヤのくぐもった声が聞こえた。
「おまえだけは、助けてやる。私の恩情を受け入れればな」
黙って首を振るアヤに、キノックは言い捨てた。
「なら、死ね」
その言葉に、アヤは顔を上げた。
自分を見つめるキノックの瞳に、もはや昔の彼の面影は、ひとかけらもなかった。
立ち上がると、牢の中に入って来た僧兵の後を、アヤは大人しく着いていった。
行く先は、浄罪の路。
ベベル宮の、事実上の処刑場だ。
我らが直接手を下さずとも、中の魔物という住人が始末してくれる。
異界送りをする召喚士はいない。
死んだ罪人が魔物に姿を変え、他の罪人を殺す。
そしてまた、次の罪人を待つ。
千年もの永き刻、その繰り返し。
このやり方なら、なんら教えに背いてはいない。
キノックはアヤが居なくなった牢の前で、声を上げて笑った。
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