26話 コンチネンタル・サーカス
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【高所恐怖症とドレスの女】
「あれは、『聖なる塔』ね」
「聖なる塔?」
ティーダがオウム返しに訊く。
アヤは頷いた。
「エボンの式典を執り行う場所よ。めったに使わないわ」
「ユウナが無事なのはいいけどよ。なんだよ、あの格好?」
ユウナは髪を結い上げ、冠形の髪飾りをつけ、薄い布で全身を覆い隠している。
白いドレスの裾は、前は膝上だが、伴侶になるシーモアの地位を誇示するように、後ろは長く広がっている。
腰には色鮮やかな花と、白い羽が着いていた。
「花嫁衣装?」
「結婚式をあげるみたいね。エボンの老師の婚礼の儀なら、あそこで執り行ってもおかしくないわ」
モニターを見ていたリュックが、不満顔で口を挟む。
「でもさあ、何でシーモアが生きてんの?」
「死んでいるさ」
「うぇっ!?」
アーロンの言葉に、リュックは口を歪めて奇声を発した。
「ジスカルと同じだ。強い想いに縛られ、異界にいかずに留まったのだ」
「うわ~!?しつこ!」
ユウナがさしたる抵抗をみせない様子に、アーロンは推測を口にする。
「ユウナは、奴を異界送りするつもりかもしれん」
マカラーニャ寺院での、シーモアの執着を思い返し、アヤは不安げにアーロンを見た。
「上手くーーいくかしら?」
「シーモアが隙をみせれば、な」
彼の方が役者が上なことは、アーロンも重々承知している。
アヤとアーロンの心中をよそに、リュックは意気込んだ。
「ユウナん救出作戦だね!あたし、燃えてきたよ!」
「でも、おかしいわ・・マイカ総老師は、何故、死者を放置しているの?」
「死人ーーか」
「ねえ、死人って何?」
アーロンの呟きを、リュックはルールーに訊いた。
「死人っていうのはね」
死して尚、この世に留まった者。
体は幻光虫で構成された幻光体であり、その存在は魔物や召喚獣に近い。
しかし、エボンの徹底した教えのため、その存在さえあまり知られていない。
アヤはルールーの説明に、サヌビア砂漠でよぎった疑惑が、アタマを擡げる。
「ベベルかーー10年ぶりだな」
通路の壁にもたれて、アヤを見た。
特別懐かしむ様子も、嫌悪を示す様子もみせず、ただ過ぎて云った時間をアーロンは振り返った。
「何も変わってないわよ」
アヤも、抑揚のない返事を返した。
「シーモアは、まだ諦めていないようだな」
「もう、願いは叶わないのに」
アヤは通路の先を、見るともなしに見ている。
「『それ』が、奴をこの世に繋ぎ留めている、理由だろう。憐れだなーー」
アーロンは、自らの事のように、口の端をあげた。
そんなアーロンと、アヤは目を合わせることが出来なかった。
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