21話 冷戦
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「アヤ!」
スノーバイクから降りると、リュックが笑顔で駈けてくる。
「乗り物酔いしなかった?」
「うん、大丈夫よ。ありがと、リュック」
アヤはリュックの手を引いて、皆から少し離れた。
何も言わずに、アーロンがそれを見ている。
「ーーあのね、リュック」
「何?」
躊躇いがちに、アヤは口を開く。
「ワッカの弟が討伐隊に参加して、命を落としたことは知ってる?」
「うん・・グアドサラムで、ワッカから聞いたよ」
悲しそうに、翠の目を伏せる。
「ワッカは、アルベドが憎いんじゃないと思うの」
「え?」
リュックは訳がわからないと、アヤを見つめる。
「弟のチャップを殺したのは、シンーー
でも『シン』は、憎むにはその存在があまりにも大きくて、強すぎてーー手が届かない」
自分を見つめるリュックの手を、両手で握りしめる。
リュックは黙ったまま、アヤを見つめ続けた。
「だから、教えを破って機械を使ったことを理由に、アルベドを憎むことでチャップを失った悲しみを、紛らわしているんじゃないかしら…」
シンを倒す為に、沢山の命が散って逝った。
アルベドも人も。
それを間近で見てきたアヤは、その悲劇の原因を、特定の種族に押し付けて憎しみの対象にすることなど、愚の骨頂としか思えなかった。
「ごめん、上手く言えないーー」
瞼を伏せると、涙が一筋、こぼれ落ちる。
「ーーアヤ」
リュックはアヤに抱きつくと、ありがとうと呟いた。
アーロンは、凍りついた道に視線を移した。
ワッカは、寺院への歩道を黙々と歩いていた。
リュックがアルベドだと分かっていて、ガ-ドにしたのも気に喰わないが、自分独りだけ知らなかったことも面白くなかった。
歩きながら、冷たくなった手を服のポケットに突っ込んだ。
すると、柔らかいものが指先に触れる。
何だろうと引っ張り出した。
「あーー」
リュックのハンカチだった。
洗ってから返そうと、ポケットに入れたまま忘れていた。
『リュックはいい子だよ』
「分かってるよ。そんなこと」
ワッカはハンカチを握りつぶした。
「でも、あいつはーー」
手の中のものを、氷に叩きつけようと腕を振り上げる。
「あ、来た来た。お-い!ワッカ-!!」
歩いて来るワッカの姿を見つけたティーダは、大きく手を振る。
走り出したワッカに、皆が門の前に集まった。
息を切らしてたどり着いたワッカは、皆を見渡す。
「待っててくれたのか?」
「当たり前っス!」
ティーダがニカッと笑う。
「おう、わりぃ・・」
バツが悪そうに答えるワッカを気にすることなく、アーロンは云った。
「行くぞ」
.
