21話 冷戦
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メイチェンが部屋へ消えると、旅行公司の扉が開き、迎えの僧官が姿を現した。
「シーモア様の命により、参りました」
ワッカとルール-は慌てて立ち上がり、祈りを捧げる。
「寺院でシーモア老師がお待ちです。私は先に戻ります故、お支度が整い次弟、出発されるが良いでしょう」
僧官が外へ出るのを待って、三人は顔を見合わせた。
「ワッカ、呼んで来なさいよ」
「なんで俺が?イヤだよ」
ルール-の命令に、ワッカはそっぽを向いた。
「なんで嫌なのよ?」
「だあってよ、俺が行って、お取り込み中だったらどうするよ?」
口を尖らせてゴネるワッカに、ルール-は顔を赤くした。
「何言ってんのよ、私だって困るわよ!ティーダ、あんた行きなさいよ。
アーロンさんと付き合い長いんでしょ?」
「お、俺だってイヤっスよ!」
顔の前で、両手を振って拒んだ。
「あたしが行こうか?」
「子どもはダメだ」
リュックが行こうとすると、ワッカが襟首を掴んで引き戻す。
「じゃあ、早く呼んで来て、ユウナんのとこ行こうよ!」
誰がアーロンを呼びにいくかで揉めていると、キマリが無言で部屋へ向かった。
「お、おい。キマリ!」
ワッカの制止が耳に入らないのか、部屋の前に立つとノックもせずに扉を開けた。
「うおぉ!!」
四人は固唾を飲んで見守った。
「アーロン、寺院から迎えが来た。出発する」
キマリの声に、間をおかずに部屋の中から返事が聞こえる。
「わかった。すぐ行く」
扉の陰から姿を見せたアーロンが、服を着ていた事にほっと胸を撫で下ろした。
「アヤ、行くぞ」
ベッドの脇のサイドテーブルに置いたサングラスを手に取り、アヤに声を掛ける。
「はい」
アヤは、憑き物が堕ちたような、どこかすっきりした顔で頷いた。
ベッドに横になった為に乱れた髪を素早く整え、アーロンと部屋を出た。
フロントへ向かおうとすると、キマリがアーロンを呼び止める。
アヤに先に行くように云うと、アーロンはキマリに向き直った。
「話は、聞けたのか?」
「ーーアヤから、何か聞いていたのか?」
質問に質問を返されたキマリは、首を振った。
「キマリが何度訪ねて行っても、ユウナの様子を訊くばかりで、アヤは自分の事を何も話そうとしなかった。
でも、キマリにはわかった。アヤは自分を責めている。
理由は、わからなかったが」
黙って聞いていたアーロンが、静かに告げる。
「もうーー大丈夫だ」
「そうか。なら、いい」
余計な詮索をすることなく安堵するキマリに、アーロンは感謝した。
歩き出したキマリの背に、アーロンは言った。
「いつか、話す事があるかもしれん」
「機嫌が良かったら、聴く」
その返答にアーロンは笑った。
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