20話 父の願い 友の想い
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【懺悔の森】
避雷塔以外何もない平原の向こうに、緑の森が見えて来た。
完全に平原を抜けきると、リュックは元気を取り戻す。
「や~と、抜け出した~!」
恐る恐る歩いていたのが、嘘のように軽快になる。
雷平原は薄黒い雲で覆われた空が続いたが、マカラーニャの森は半透明な鉱物的な木々が道と溶け合い、青白く輝きながら空を塞いでいた。
森に入ったところで、一行は雷雨で濡れた服を乾かす為に、休息する。
遅れながら歩いているティーダを、アーロンが待っていた。
追いついて来たティーダに声を掛ける。
「ユウナのことが気になる、か」
「気にすんなってのが無理だよ。何するつもりなんだ?」
ユウナの考えていることがさっぱりわからないと、途方に暮れた顔をしている。
「単純に考えればーー」
アーロンは懐かしそうに、森を見渡す。
「結婚を承諾することを材料にして、シーモアと交渉するつもりなんだろうな」
「なんの交渉?」
「さあな。そこまではわからん」
あのスフィアに、何が隠されているのか。
「ひとりで大丈夫かなぁ・・」
「望み薄だな。シーモアの方が、役者が上だ」
勝負する前から、結果が見えていると云いたいのだろう。
心配するだけ無駄だとばかりに、アーロンは鼻で笑う。
「わかってんならさぁ、何とかしない?」
ユウナの結婚を、まだ納得出来ないティーダは、唯一止められそうなアーロンに望みを託す。
「ユウナがそれを望んでいない」
「それもわからないんだよなぁ。俺たち信用ないのか?」
「逆だな。皆を巻き込まぬよう、ひとりで解決しようと決意している」
「うん、そんな感じだ。でもそっちの方が心配するっつうの」
リュックやルールーと、楽しそうに話すユウナを眺める。
その姿からは、雷平原での思い詰めた表情が嘘のようだ。
「話してくれるだけでいいのにさ」
「それが出来ん娘なのだ。生真面目で思い込みが激しく、甘え下手だ」
アーロンの観察眼に、ティーダは笑う。
「よく見てんなぁ」
「ユウナはわかりやすい」
姿は美しく成長したが、中身は幼い頃から、少しも変わっていない。
歯痒い程に、優しい。
「はは。確かに」
「お前もな」
ティーダは、アーロンの小馬鹿にした言い方に、ムッとした。
皆のところへ向かいながら、アーロンはティーダに助言する。
「いつかガードの出番がくる。その時は、お前が支えてやれ」
ティーダはアーロンの背に、無言で頷いた。
アーロンと話したら、雷平原であんなに動揺していたのが、嘘のように落ち着いた。
ユウナの結婚は、俺が想像するような、あれやこれやの結婚じゃなくて
そう、旅を続ける為の、ちょっとした儀式みたいなもの。
そういう風に考えられるようになってたからだと思う。
まあ、なんていうかーー諦めの境地って奴かもしれないけど。
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