19話 雷の夜
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雷平原の旅行公司では、部屋を三つ取った。
リュックが、ひとりは寂しいと、相部屋を主張した。
男四人でひと部屋は窮屈だが、珍しくユウナが個室を希望したことと、他の客で埋まっていた為だ。
それぞれの部屋に収まり、寛いでいた。
リュックは、外にいるよりもだいぶ小さくなった雷鳴に、やっと元気を取り戻す。
部屋に用意されたお茶を、三人で飲んだ。
「ふ~、生き返るよ~」
雷から解放され、安堵するリュックに、アヤもルールーも微笑む。
「ね~、アヤはおっちゃんのどこがいくて付き合ったの~?」
リュックはカップをテーブルに置くと、頬づえをついた。アヤは、困った顔をする。
「リュック、やめなさいよ」
ルールーがアヤを気づかい、リュックを窘める。
「だってさ、興味あるんだもん」
頬づえしていた手をテーブルに置くと、その上に顎をのせる。
「ん~、優しいところかな」
仕方ないと答えるアヤに、リュックは不満げな顔をした。
その顔を優しい笑みで見つめながら、アヤは続ける。
「不器用な人だから、伝わりにくいかな。私も、初めて逢った時はとても怖くて、碌に話せなかったけどね」
「そうだったんですか?」
驚いたルールーが、目を見開いた。
「リュック、お風呂に入ってきたら?旅行公司に泊まった時じゃないと、入れないわよ」
アヤは話を終わらせるように、お茶を一口飲んだ。
「うん。そうだ!ユウナんと入ろ!」
そう言うと、部屋を飛び出して行った。
「元気ねぇ」
アヤの言葉に、ルールーはやれやれと言った顔をする。
「ほんとに」
台風が去った後は、部屋の中が妙に落ち着いた。
アヤは、静かにお茶を飲むルールーに訊ねた。
「ルールーは、どうしてガードになったの?」
ルールーはしばらくテーブルを見つめた後、アヤの目を見てキッパリ言った。
「シンを倒す為です」
そこで言葉を切ると、少し俯いた。
「でも、私は召喚士にはなれなかった。だから、召喚士を守るガードになったんです。貴女のように」
「ユウナを守る為?」
他の召喚士がシンを倒せば、ユウナは、召喚士にならなくてすむかもしれない。
ルールーがアヤを見ると、彼女は少し、悲しい顔をしているように見えた。
「はい」
「そっか」
そのまま、カップの中に残ったお茶をボンヤリ見ているアヤに、今度はルールーが訊ねる。
「アヤさんこそ、何故ガードに?」
「聞いたら、がっかりするよ」
アヤは、自嘲の笑みを浮かべる。
「それでも、伺いたいです」
自分が、ガードを目指すきっかけになった、憧れのひと。
その女性のことが、少しでも知りたい。
「ベベルに居たくなかったの。それだけ」
「それだけ、ですか?」
余りに簡単な動機に、ルールーは呆気にとられた。
「そうよ。だから言ったでしょ、がっかりするって。決して、ブラスカを守れるだけの強さが、あったからじゃない」
アヤはルールーを見て、笑った。
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