19話 雷の夜
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すぐ近くの避雷塔に雷が落ち、塔が赤く色づく。
その彩りの美しさに、アヤは思わず目を奪われた。
ワッカは鳴り止まない雷鳴に、子どものようにはしゃいだ声を上げる。
「お~!近い近い!うはははは~!」
手をかざして、雷を見物している。
その横を蔑むように、ルールーが足早に通り過ぎた。
「さっさと行くわよ」
「へいへい」
ルールーの雷が落ちないうちに歩き出そうとするワッカの横で、奇妙な声が聞こえた。
「へへへへ」
全員が、声の主に注目する。
「ん?どした?」
「どうしたの、リュック?」
アヤも、心配して声を掛ける。
「へへへへへ」
尚も、奇声を発し続けるリュックに、ティーダも怪訝な顔をする。
「なんだよ、気持ち悪いな」
また響いた雷に、リュックは、その場にしゃがみ込んだ。
「いいゃあ~~~!!!」
皆が呆気にとられる中、素早く地面を這い進み、ティーダの脚にしがみつく。
そのまま顔を上げると、子どものように駄々をこねる。
「やだ~!もうやだ~!雷やだ~!!今日はもう、そこに泊まろうよ、ね?ね?」
少し先に見える、旅行公司を指差す。
「ここの雷は、止むことがない。急いで抜けた方がいい」
リュックを見下ろして、アーロンは、先を急ごうとした。
「知ってるけどさ~リクツじゃないんだよ~」
自分の脚にしがみついて懇願するリュックに、ティーダは笑いをこらえながら、アーロンにお伺いを立てる。
「だってさ。ど~する?」
アーロンは、盛大にため息をついた。
仕方なく旅行公司まで来たが、リュックとティーダを除き、入口の前を素通りする。
「頼むよ~休んでこうよ~」
泣きそうなリュックの声に、チラリと振り返るが、何事もなかったように歩き出す。
「雷はダメなんだよ~休もうよ、ね?」
足を止めずに振り返ったが、アーロンは、見向きもしない。
それを見たリュックは、懸命に泣き落とす。
「ひどい、ひどいよ。血も涙もないよ」
遂に姿が見えなくなり、リュックとティーダだけが残された。
「もしかして、楽しんでる~?」
やっと、からかわれていることに気づいたリュックは、皆が去った方角を睨んだ。
「アーロンさん、もういいんじゃ」
ユウナがリュックの可愛らしさに、肩を震わせて笑いをこらえている。
「アーロン、これ以上は可哀想よ」
アヤも口元を押さえ、必死に笑いをこらえていた。
「アヤさん、笑いながら言っちゃ、ダメっすよ」
アヤにツッコミをいれるワッカも、ニヤニヤ笑っていた。
アーロンは苦笑しながら、戻り出した。
「五月蝿くてかなわん」
情けない顔で立っている、リュックのそばへ来るとルールーは
「一気に抜けようかって、話もあったんだけどね。シーモア老師の屋敷で手間取ったから、ここに泊まるって決めてたのよ」
「え~いつ~?」
むくれるリュックに、ルールーは、ワッカと顔を見合わせて笑う。
「あんたとワッカが、戻って来る前にね」
「おまえがあんまり怖がるからよ。つい、面白くてさ」
「ひど~い!ユウナんも、グルだったんだ!」
ユウナが顔の前で、手を合わせて謝る。
「へへ、ごめんね」
「もう~みんなキラ~イ!!」
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