18話 グアドサラムにて
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異界への参拝路を、皆、無言で歩いた。
ゆるやかな傾斜の道が終わり、不揃いな階段が見える。
「この先が、異界なのか?ここに、ユウナの死んだ親父さんがいる?」
「ま、行けばわかるさ」
異界の門を指差すティーダに、ワッカは上手く説明出来ずに、先に進んだ。
皆が異界へ向かうなか、アーロンは、階段に腰を下ろした。
それに気づいたティーダが、戻って来る。
「ど-して行かないんだ?」
「異界は気に喰わん」
アーロンは、顔を背けて呟く。
「怖いんだろ」
「未来の道を決める為に、過去の力を借りる。異界とは、そんな場所だ。性に合わんーー」
向こうへ行けと、茶化すティーダを追い払う。
いつもの迫力が、ないように見える。
「ほんとはさ、死人じゃなくて、思い出に会いにいく場所なんだよ。
会いたいって思う気持ちに、幻光虫が反応するの。
で、人の形になる。よ-するに、幻ってわけ」
リュックが、かみ砕いて説明する。
「ふ~ん」
「じゃあ、行ってらっしゃい」
理解したのかしてないのか、生返事をするティーダに、リュックは手を振った。
行かないのかと、訊ねると
「思い出は、心の中に」
胸に手を当て、首を傾げる仕草に、ティーダは分からんと云った顔をする。
「はぁ?」
「思い出は優しいから、甘えちゃダメなの!」
そういうと、手すりに腰掛けた。
ティーダは異界の門を抜け、物見台のような場所に足を踏み入れた。
周りには雲が漂い、会いたい者を映す、スクリーンの役目を果たしている。
その雲は、遥か下に渦を巻き、絶え間なく流れ込んでいる。
眼下には巨大な滝がU字を描き、滝の下には極彩色の花畑が見える。
上空には青白い月のようなものまで浮かび、空までも再現されている。
虚言と真の境目がわからない世界が、広がっていた。
そして、今までに見たこともない数の、幻光虫が飛んでいた。
初めて来た異界のことより、ユウナの気持ちが気になってた。
ルールーに近寄り、ワッカの方を見る。
「あれ、誰?」
ワッカの前に、青年が浮かんでいる。
目鼻立ちが、どことなくティーダに似ていた。
「チャップよ。ワッカの弟の」
「あれがーー」
この剣の持ち主かと、ティーダは、手にしているそれを見る。
ワッカは弟に頭を下げ、何も言わない彼に、何やら語り続けている。
ルールーとティーダは、離れてそのさまを見ていた。
「彼は死んで、私は生きている。ここへ来るとよくわかるわね」
唐突に、ルールーが口を開く。
「そろそろ私も、前向きに考えなくちゃね」
言葉とは裏腹に、ルールーは下を向いた。
「チャップのことに、こだわらないってことっスか?チャップには悪いけど、他の誰かと付き合うとか?」
ルールーは、ティーダを見る。
「そうね、そういうのも、アリかな。」
そう言うと、チャップをいとおしそうに見つめた。
「さよなら、チャップ。いつも不機嫌そうだって、あんたは言ってたけど・・楽しかったよ・・とてもね」
ルールーは、幻光虫が描いた愛する男に、別れを告げた。
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